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講談社から皆様へ
崎濱盛三医師への判決にあたっての見解
2009年4月15日
株式会社 講談社
本日、奈良地裁から崎濱盛三医師に対して、きわめて不当な判決が下されました。
まず、この判決は崎濱医師および弁護団の正当な論証をあえて退け、検察側の主張を単に追認しただけの理不尽なものであり、強く抗議します。あわせて、弊社刊『僕はパパを殺すことに決めた』(草薙厚子氏著)に関連して、いわれのない罪に問われた崎濱医師に心よりお詫び申し上げます。今後とも崎濱医師にはできうる限りの支援を続けてまいります。
弊社は、本来あってはならない報道に対する公権力の介入を引き起こしてしまった社会的責任を重く受けとめています。その反省のもと、今後も萎縮することなく真摯に出版活動を行い、社会に貢献してゆく所存です。
2003年の個人情報保護法成立以来、さまざまな形でメディアの活動に対する規制が強化されてきました。また、間もなく導入されようとしている裁判員制度においても、多くの有識者が指摘しているとおり、捜査当局による事件の全容の開示がなされなくなることが強く危惧されています。
昨今の報道をめぐる裁判の判決を見ても、司法権力がメディアを圧迫しようとする傾向はますます鮮明になってきております。国民の「知る権利」が侵されかねないほどの異常な事態の頻発に、私たちは重大な危機感を覚えずにはいられません。
本件に関して、弊社は一貫して奈良地検の不当性を訴えてきました。
そもそも崎濱医師は任意の取り調べ段階で事実関係を認めており、逃亡・証拠隠滅などのおそれが皆無であるにもかかわらず、逮捕、20日間にわたって勾留するなど、奈良地検の手法はまさに捜査権の濫用というべき異常なものでした。一連の介入は、メディアへの情報提供者を萎縮させる目的でなされた強圧的かつ恣意的なものであることを改めて確信しております。
本書は2006年6月、奈良県で起こった高校生による自宅放火事件をテーマとする作品です。少年の家族3人が犠牲になるというまことに痛ましい事件でしたが、その真相はほとんど明らかにならないまま風化しようとしていました。弊社としては、知りうる限りの事実を伝えることは社会的に大きな意義があると考え、本書を刊行した次第です。
一昨年11月に発足した第三者による調査委員会からも指摘を受けたとおり、今回の弊社の本づくりの過程にはさまざまな問題点がありました。情報源との関係構築に不備があったこと、社内のチェック・システムが万全なものでなかったこと、装丁やキャッチ・コピーに行き過ぎた部分があったことなど、報道に携わる者として率直に非を認めざるを得ません。
弊社としては第三者調査委員会からの提言を真剣に受け止め、昨年4月に社内に出版倫理委員会を設置しただけでなく、全社員に向けて定期的にセミナーを開催するなど、社をあげて意識向上に努めております。
日本書籍出版協会と日本雑誌協会が共同で発表した「出版倫理綱領」には、「文化と社会の健全な発展のためには、あくまで言論出版の自由が確保されなければならない」「われわれは、著作者ならびに出版人の自由と権利を守り、これらに加えられる制圧または干渉は、極力これを排除するとともに、言論出版の自由を濫用して、他を傷つけたり、私益のために公益を犠牲にするような行為は行わない」とあります。
この綱領の精神に則り、私たちは今後とも、公益性に十分な配慮をしつつ、よりよい出版活動を展開してゆく所存です。
本件は、私たちメディアに携わる者にさまざまな課題を投げかけています。少年事件報道のあり方、メディアと司法の関係、青少年の精神保健の現状など、いずれも現代社会において避けては通れないテーマです。これらのテーマについても私たちは継続的に取り組み、出版活動を通して社会的責任を果たしてまいります。
何とぞご理解たまわりますようお願い申し上げます。
