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第14回吉川英治記念館写真コンテスト入賞作品

「 日 本 」
「 淋しさは叱ってくれる人がない 」
「 酒の味二十五年でややわかり 」

金賞 「ペットを抱いて」
本間浩一(小田原市)

最近の調査によると、日本人の20%以上が65歳以上の高齢者で、全体的に独身者が増加しているようだ。そうした社会背景と関係があるのだろうか、ペットを飼っている人が非常に多い。常に身近にいて人の心を癒してくれるペットを愛するからだろう。散歩の途中なのだろうか、ペットの兎をしっかりと抱いている女性の表情には、寂しさを癒してくれるものに対する深い満足感と、限りない愛といった精神的なものがよく表われている。

銀賞 「お参り」
竹尾康男(宮崎市)

いま写真は世の中に溢れている。新聞や雑誌などのマスメディアは勿論、デジタル写真の普及で多くの人が日常的に写真を撮っている。しかし人の心を打つような表現力の優れた写真は、意外と少ない。「お参り」と題されたこの作品は、人が神仏に祈る、お参りをするという行為の底にある精神的なものを強く感じる。明るいライトに照らされた小振りな注連縄に象徴性があり、お参りをする人と足元にいる愛犬の姿に、深い静寂と冬の日の寒さを感じる。

 

銅賞「飽食」
小畑一弘(一関市)

大地震と大津波、それに加えて原発の放射能汚染問題などの災害が、日本人の生き方や自然に対する考え方などに与えた影響は大きい。例外はあるものの、豊かな食生活を当然のことと考え、日々を過している我々の日常生活に対する批判をこめた「飽食」に作者の鋭い目を感じる。美味しそうな料理見本で飾られたショウケースと、どこかしょぼくれた感じのする托鉢僧との組み合わせに、アンバランスな日本の今の姿が重なって見える。

 

佳作 「秋まつり」
金益隆志(日高市)

祭りの写真の面白さは、祭そのものが持つ情景の魅力や楽しさに加え、周辺の様々なエピソードに、地域の人達の日常性や感情が写りこむところにある。町や村を巡って獅子舞を披露している一行に、道路脇に立ち深々と頭を垂れている女性の後姿に、祭りを敬う心が見てとれる。華やかな祭りの行列と、画面左側のポスターや無雑作に積まれたマキなどに、地域の日常がよく表現されている。

佳作 「今年こそは!」
山下利夫(あきる野市)

組写真の最小単位である二枚の写真を、大変効率的に組み合わせている。去年あまり良いことがなかったが今年こそは、といった感じで大きな鐘を突く若い女性の姿が、実に楽しそうだ。やや下からのカメラアングルが、画面に動感を与えている。鐘を突く前の三人の賑やかな表情と、突いた後の神妙に手をあわせている姿との対比が鮮やかだ。周囲の大勢の人達の動きにも変化があり、初詣の雰囲気がよくでている。

佳作 「祭り日」
吉野平治(入間市)

東日本大震災で多くの外国人が帰国したようだが、それでも日本での生活を楽しむ外国人は多い。神酒所でふるまわれた日本酒を、ごくごくと美味しそうに呑んでいる外国の女性と、地元の関係者との和やかで楽しそうな雰囲気が、よく伝わってくる。人々の明るい表情を捉えたシャッターチャンスがいいので、人物が生き生きと描写されている。この情景を捉えたカメラポジションが的確だ。

 

総 評

 

 吉川英治記念館写真コンテストは、今年第14回を迎えた。国民的作家である吉川英治の業績を記念して創設されたこのコンテストには、他にない特徴がある。吉川英治が愛した言葉や、作品の主題になっている精神的なものをテーマに設定している点だ。今年は「日本」と吉川英治が詠んだ川柳「淋しさは叱ってくれる人がない」「酒の味二十五年でややわかり」の二句を選んだ。川柳の部は、応募者に戸惑いがあったのか応募数が少なく、「日本」が圧倒的に多かった。

 金賞の「ペットを抱いて」は、老若を問わず独身者が増加し、人間関係が希薄になった社会状況を反映してか、ペットを愛する人が増えている姿を、深く優しい眼差しで表現している。銀賞の「お参り」と銅賞の「飽食」は、現代の日本が持つ問題や精神文化といったものが、巧妙に表現されていた。

 本コンテストは、来年も行う予定なので、写真を愛する人の積極的な参加を期待したい。

(選考委員:熊切圭介 選評とも)

 

 




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