トップページへ戻る

「 母 」「 旅 」「 食 」
第12回吉川英治記念館写真コンテスト入賞作品

金賞 「海岸通り」
宮田憲雄(広島県府中市)

最近はデジタル写真の急速な普及もあって、カラー写真全盛といった感があります。しかし、すべての色彩を白黒で表現するモノクローム写真は、想像力をよく強く刺激する、といった意味で魅力を感じる人も増えています。海岸の光景をシンプルに表現した三枚組の作品は、白黒写真の魅力に溢れています。構成枚数の少ない組写真はなかなか難しいのですが、作者の精神性といったものを感じる、詩情豊かな作品で、大変魅力があります。

 

 

銀賞 「夏・ガブリ」
平野昌子(神奈川県横浜市)

そのものズバリの題名が愉快です。夏にガブリ、スイカにガブリとかじりついている情景を重ね合わせた表現がきまっています。勿論写真そのものもまた、夏をストレートに強烈に表わしていて見応えがあります。すごい形相でスイカにかぶりついている少女の姿を画面にドンと据え、前景に沢山のスイカ、背景に夏そのものをイメージさせるヒマワリを配した画面構成は完璧です。この作品からは、題名通り夏以外のものは何もイメージできません。

 

銀賞「ママの胸に」
松倉孝之(東京都八王子市)

手を大きく広げ、笑顔一杯で子どもを待ちかまえる若い母親。赤い風船を手に母親に駆けよろうとしている幼い子。母娘の愛情が明るく色濃くでている情景です。被写体の持つ時間と空間を、一瞬で捉えて表現するところに、写真というメディアの面白さがあります。そしてその瞬間だけではなく、その後の状景をイメージさせる写真ほど、面白さが深まります。この母娘は、一瞬後にはしっかりと抱き合い、頬を付け合ったことでしょう。

 

 

銀賞 「母の散髪」
山田英雄(静岡県静岡市)

最新の調査によると、日本の女性の平均寿命は86.05歳。世界一だそうです。ちなみに男性は79.29歳で第四位。散髪してもらっているおばあちゃんは90歳で、左側の女性は娘さんで68歳とのこと。二人とも元気そうです。母親の安心しきった表情と、娘さんの朗らかな笑顔から、この母子の仲の良い平和な家庭の様子が伝わってきます。黒い背景の中に、画面一杯に二人の姿を捉えた構成が見事です。人間味豊かな素晴らしい作品です。

 

銅賞 「その先へ・・・」
内山弘康(愛媛県松山市)

政治や経済が混迷状態にあるため、社会は閉塞感に包まれています。そのため人間不信といったものが広まっているのが気になります。出口の見えないトンネルの中に佇む男の姿に、時代の持つ不透明感や孤独感が、象徴的に表現されている興味深い作品です。作者は長年にわたりトンネルをモチーフにして撮影しているそうですが、セルフタイマーを使い自分自身をモデルにすることで、思い通りのイメージを創り出しています。

 

 

銅賞 「97歳の笑顔」
北尾優博(東京都町田市)

被写体になった女性は、作者の母親で、満97歳だそうですが、実に若々しい笑顔ですね。残念ながら最近、黄泉の国に旅立たれたとのことです。人物のポートレートは、写真が誕生して以来、現在まで最高のモチーフであり、数々の名作が生まれています。写された人の人柄や人生が写真から伝わってくるので、写真のテーマとして最高です。何のてらいもなく素直に撮影しているので、ちょっとお洒落したお母さんの優しい人柄がよく伝わってきます。

 

銅賞 「食べたの、だあれ?」
舘 弘美(岩手県盛岡市)

有名な彫刻家のロダンが、「すべては自然の中にある。ひたすら自然を観察するところから芸術は生まれる」といった意味のことをいっていますが、本当に自然は驚きと不思議に満ちています。大きな葉っぱに整然と並んでいる長方形の虫喰いの跡。クロヒカゲ(蝶の一種)の幼虫が、丸まっている状態の葉を喰べた跡だそうですが、自然の面白さを存分に伝えてくれる作品です。身の回りの自然をよく観察することの大切さを教えてくれます。

 

総 評

 

 本コンテストは、数多くの文学的業績を残した国民的作家・吉川英治を記念して創設されました。その吉川文学の中で扱われた様々なテーマの中から、写真表現に適したテーマを選び、それに基づいた作品を応募していただこうというのが、コンテストの主旨です。

 今年12回目を迎えましたが、今回のテーマは「母」「旅」「食」の三つで、その中から応募者の方には一つのテーマを選んでいただきました。 応募の多かったのは「旅」と「食」で、「母」がやや少なかったようです。「旅」について言えば、旅の楽しさをテーマにした作品の他、心象的なもの詩情を感じる作品など、大変バラエティに富んでいました。また「食」は、食材や食そのものを扱った作品、食生活や食風景を被写体にした作品など、面白く楽しい作品が目立ちました。「母」は、高齢化社会を反映してか、お年寄りを被写体にした作品が多く、全体的にはヒューマンな眼差しの人間味を感じる作品が印象に残りました。

 数ある写真コンテストの中でも、異色の存在だと思いますが、来年も開催します。テーマは「父」「樹」「都市」の三つです。この中から自由に一つを選んで応募して下さい。期待しています。

(選考委員:熊切圭介)

 

 




Copyright(C)2000 - All Rights Reserved by
YOSHIKAWA EIJI Cultural Foundation