異常の心理学

異常の心理学

イジョウノシンリガク

講談社現代新書

物質文明に縛られた現代人にとって、“異常の真理”は、けっして無縁ではない。たとえ自分はどんなに健康だと思っても、異常な状態や環境におかれたりすると、自分の心を失って流されてしまう。合理性の背後に、不意にしのびこむ異常性――人種的偏見、政治的な憎しみ、群集心理などは、日常生活にも、しばしば顔をのぞかせる。本書は、われわれの心にひそむ異常性を、社会的な、文化的な、さらに歴史的な視野で把え、それが現代社会にどう反映しているかを解明する。

心にひそむ悪魔――われわれは、科学の恩恵に浴して、快適な合理的な生活をおくっている。しかし、その背中合わせに物質文明の呪術が、日常生活、人間関係、政治の中で息づいていることを、忘れてはならない。ヒットラーをまつまでもなく、1人1人が呪術師の役割をになって、いまでも、中世の魔女狩り的な精神状態を醸成しているかもしれない。現代といえども、まだ魔女や悪魔たちが活躍していた中世の時代を何らかの形でひきついでいる。自分をみつめるためにも、心にひそむ異常性を知らねばならない。――本書より


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目次

●魔女狩り
●悪霊を追究した人たち
●狂気の人間集団
●心の闇を操作する
●記憶を否定する心
●知覚のおとし穴
●異常真理は作られる
 ――自我にめざめる/現代社会へのかかわり合い
●人間の心をあぶり出す

書誌情報

紙版

発売日

1969年04月16日

ISBN

9784061155848

判型

新書

価格

定価:748円(本体680円)

通巻番号

184

ページ数

253ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介