
フロイト
フロイト
- 著: ラッシェル・ベイカ- ,
- 装丁: 海保 透 ,
- 訳: 宮城 音弥 ,
- 装丁: 杉浦 康平

エディプス・コンプレックス、超自我、サディズム……など、精神分析の考え方は、広く受けいれられている。しかし、フロイトがそこにいたる道は、けっして平坦ではなかった。ユダヤ人ゆえの迫害、“性”をあまりに重視したための、世間との大きな摩擦、そしてなによりも、“心”という目に見えない領域を探るためには、自分を患者にみたてて、鋭いメスをいれるという苛酷な作業が必要であった。精神分析は、フロイト自身の精神遍歴、家庭環境を抜きにしては理解しえない。
自分自身を犠牲にして――フロイトは彼自身の生活を露出したこと、自分自身のプライバシーを自ら侵害したこと、何人も口に出したくない自分自身についての個人的なものを公然としたこと、自分自身を研究対象にしたことを気にした。しかし、自分自身の生活の最も内面的な秘密をさぐることによって、彼は神経の病気の源泉に光を投げたのだ。他の領域において、顕微鏡、パストゥールのミクロの生物の発見が行なわれたのと同様の発見を、彼は医学の世界で行ない、暗黒のなかに光を与え、病気の源泉を見出す新しい方法を発見したのである。彼は、すべてのエネルギーを使い果たして、疲労困憊し、各方面の医学雑誌に『夢判断』の書評のためのコピーを送った。――本書より
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目次
●家族のなかの愛と憎しみ
厳しい父とやさしい母
●ウィーンの大学
妻マルタとの出会い
●心の病気
「男のヒステリー」をめぐって
●精神分析運動の発展
ユングとの出会い
●ナチスに追われて
ウィーンからロンドンへ
書誌情報
紙版
発売日
1975年01月29日
ISBN
9784061157835
判型
新書
価格
定価:792円(本体720円)
通巻番号
383
ページ数
246ページ
シリーズ
講談社現代新書