夢診断

夢診断

ユメシンダン

講談社現代新書

永遠の時間と無限の宇宙を駆けめぐる夢は人間の意識と無意識の対話といえよう。心の奥に沈むエモーションはひきだされ、よろこびやかなしみの感情はドラマとしてあざやかに定着する。本書はシャドウ、ペルソナ、アニマ、アニムス、太母、老賢人などユングの元型のイメージや集合無意識の考えを駆使しながら一人芝居としての夢をあざやかに診断していく。漱石の夢、更級日記の夢、未開部族の夢などとともにユング研究所以来の著者自身の夢ノートをてがかりに、暗く、抑圧された衝動の表現としてではない人生をより豊かにしていく夢の可能性を語る。

夢と遊んでみる――最近、ヨーガや禅などを好み、実践的な精神的修行の一つとして、夢に興味をもつ若い人たちが増えている。そして、マンダラや仙人や大女神の夢を見る人たちも多い。その結果として、インドやネパールに出かけたり、世界を駆けめぐる計画を立てる人もいる。それは若さと深くかかわる自我膨張の一つかもしれないということは知ってほしい。それでもなお、山に籠ったり、外国へ出かけたい人たちを、わたしはとめる気はない。なにごとも計算ずくめで、若さを失なった感動なき人々に比べれば、はるかにましだと思うからである。夢は考えだすと、やめられないほどおもしろい。ただ夢を考える時は、夢の世界に呑みこまれないように、しっかりとした自分をもってほしい。いつか、夢にそれこそ夢中になって、おかげで試験勉強に手がつかずに、落ちてしまったなどと文句をいっていた若ものもいたけれど、そこまでわたしは責任をもつ気はない。――本書より


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目次

●夢の意味
●夢分析の諸相
●ユングの元型とイメージ
●シャドウとペルソナ
●アニマとアニムス
●太母と老賢人
●文学作品における夢
●大いなる夢
●子どものもつ謎
●夢の危険と可能性

書誌情報

紙版

発売日

1981年04月17日

ISBN

9784061456136

判型

新書

価格

定価:726円(本体660円)

通巻番号

613

ページ数

214ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介