
うつ病の時代
ウツビョウノジダイ
- 著: 大原 健士郎

不眠や抑うつ、焦燥、食欲不振、体重減少、死の誘惑など、1度はだれでも体験した症状である。まじめで几帳面な人が、ある日突然孤独になる。背後からヒタヒタと迫っているのがうつ病である。蒸発、登校拒否、アルコール依存症などの裏側でも、かならずうつ病が糸を操っているという。ストレスの多い管理社会、冷えきった家族や職場の人間関係は、人をさらに孤立させていく。「現実逃避しながらも、一方では『助けられたい』と願う彼らには、暖かい人間関係だけが救いである」と訴える本書は、患者たちの対話の中で構築された〈うつ病に人間学〉である。
助けられたい」願望――孤独な魂は、周囲に向かって助けを求める。それはよく狂言自殺の形をとって現れる。遺書めいたものを書いて、家人の目にふれやすいところに置いたり、死を口走ったり、感傷的になったり、反抗的になったり、家出めいた行動に出たりする。たいていのばあい、周囲は彼らの苦悩に気づいて、救いの手をさしのべる。しかし、ときによっては周囲の者がそれに気づかなかったり、放置したりしていると症状は進行する。そして重症になると、「助けられたい」気持ちは影をひそめ、「死にたい」気持ちが多くの比重を占めるようになる。――本書より
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目次
●うつ病とは何か
●仮面をかぶったうつ病
自殺――助けられたい願望
情死――心中というヴェールをかぶって
親子心中――日本的風土のなかで
アルコール依存症――現実からの逃避
蒸発――歪んだ家族内関係
●うつ病者の心理
●うつ病と社会
うつ病はふえているか/管理社会とうつ病
書誌情報
紙版
発売日
1981年07月17日
ISBN
9784061456228
判型
新書
価格
定価:770円(本体700円)
通巻番号
622
ページ数
196ページ
シリーズ
講談社現代新書