
読書の方法〈未知〉を読む
ドクショノホウホウミチヲヨム
- 著: 外山 滋比古 ,
- 装丁: 杉浦 康平 ,
- 装丁: 鈴木 一誌 ,
- その他: ヴァザルリオーダール

一度さっと読んだが何とも意味がわからない。読みつ戻りつ、考え考え何度も読んでみる。ついに言わんとすることがわかる。登頂のよろこびに似た感激の一瞬である。読書におけるこの“発見”を、現代人はなぜ忘れてしまったのか。予備知識のある内容ばかりを読んでいては、いつまでも発見はない。どうすれば〈未知〉のことを読み解けるのか。今まで一様と考えられてきた読みを、既知で読むアルファー読みと未知を読むベーター読みに分け、悪文の効用、素読の再評価、耳で読む法など、豊富なヒントを提示しながら、豊かな読書生活への方策をさぐった。
“一挙に本丸から攻めよ”――泳ぐのはたいへんだからといって、いくら畳の上で稽古していても、いつまでも泳げるようにはならない。水に入るのがこわいから、砂場で泳ごうか、などと言っているのでは話にならない。どうせ一度は苦しい目にあわなくては泳げるようにならないのなら、ひと思いに、まるで泳げないのを承知で海の中へ突き落としてしまえ。何とか泳げるものだ。素読にはそういう読者への信頼感をもっている。それと同時に、へたにやさしいものを読ませたりしていると、いつまでたっても、四書五経のようなところへはたどりつけまい、という考えもある。アルファー読みからベーター読みへ切り換えて、などといっていては、本当の読みができるようになるまでにどれほどの時間がかかるか知れない。一挙に本丸から攻めよ。それが素読の思想である。――本書より
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目次
●わかりやすさの信仰
●音読
●教科書の憂鬱
●裏口読者
●アルファー読み・ベーター読み
●虚構の理解
●素読
●古典と外国語
●読みの創造
●認知と洞察
書誌情報
紙版
発売日
1981年11月18日
ISBN
9784061456334
判型
新書
価格
定価:748円(本体680円)
通巻番号
633
ページ数
193ページ
シリーズ
講談社現代新書