「法華経」を読む

「法華経」を読む

ホッケキョウヲヨム

講談社現代新書

人間の悩み、恨み、欲望はつきるところをしらない。この世のすべてのものを肯定して、さわやかに明るく生きることはできないものか。「法華経」はいう。自分は救えなくとも、人を救えと。私利私欲をすてて生きると、見るもの聞くものみな美しくなり、さとりは、突然にやってくると。太陽や月の光が、暗いところを照らし出すように衆生の闇を滅し人々をゆったりとした絶対肯定・無限抱擁の世界へ導いてくれる「法華経」の真髄を、数々の生きざまを通して語る。宇宙的な超越世界に読者を誘う心の書。

すざまじき男――今の日本人は、憎しみには憎しみを返すという型の人間が多いが、常不軽菩薩は憎しみに対して、愛を、尊敬を、信ずることを返した。それは、「すさまじい楽天主義」だと思う。楽天主義というと人はすぐ、いいかげんとか、気楽さとか、人のよさとか、うすのろとか連想するらしいが、楽天主義とは、すさまじきものである。殺されたって、人を信じ通すという人生観を変えないのだ。人間はすばらしい。自然はすばらしい。生まれてくるってことはすばらしい。死ぬってこともすばらしい。病気になるってのもすばらしい、という風に、徹底的に信じ通すのだ。肯定、肯定、絶対肯定してゆくのだ。常不菩薩は、すさまじき楽天主義者である。私はこの頃、男というものはどこかですさまじい生き方がなくてはならぬと思いはじめている。人間はすばらしいと信じ通すすさまじさである。――本書より


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目次

●イメージで書かれた法華経
●人生が何を私に期待しているか
●ゆいぶつよぶつ的人間について
●壮大な一元論
●あっというまに信じてしまう
●強敵が人をば善く成しけるなり
●地涌の菩薩として生きる
●自己が、自己を、自己する
●我、深く汝らを敬う
●風の吹き過ぎるごとく

書誌情報

紙版

発売日

1982年06月18日

ISBN

9784061456570

判型

新書

価格

定価:770円(本体700円)

通巻番号

657

ページ数

234ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介