
小説―いかに読み、いかに書くか
ショウセツイカニヨミイカニカクカ

人は、さまざまな体験や感動をもっている。それを小説にまとめあげられたら、どんなにうれしいことだろう。小説を読むのも、そこに共感する自己の投影をみるからであり、同時に、書く方法がわかれば、小説にしてみたいと、だれしも思う。本書は、日本の名作をとりあげ、読むことを通して、心理描写、文章表現のコツをつかみ、小説の発想を汲みあげる。
小説を書くために──小説は最終的には、あくまでも個人的なものだ。実際、才能や個性は一般化できない。たとえばドストエフスキーの才能、個性は普遍化できない。しかし、ここにそのドストエフスキーの次のような言葉がある。「われわれは皆ゴーゴリの『外套』から出てきた」つまり文学修業において、西欧先進国の文学に読みふけった彼が、いざ自分で小説を書こうとしたときには、やはりゴーゴリから、出発せざるを得なかったのである。自分たちの先輩によって書かれた作品の方法を、読みとると同時に、それを、いかに自分流に「変形」「発展」させるか、そこに、ドストエフスキーの小説家としての正統な文学的戦いがあった。──本文より
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目次
●小説を書くことは読むことからはじまる
なぜ書くのか/読む、書くの相互関係/小説の方法
●「事実」かフィクションか 田山花袋『蒲団』
●裸眼による「直写」 志賀直哉『網走まで』『城の崎にて』
●文体──接続詞とは何か宇野浩二『蔵の中』
●虚構としての心理と意識 芥川龍之介『藪の中』、永井荷風『ぼく東綺譚』
●中心を失った「関係」の発見 横光利一『機械』
●「私小説」のパロディー化 太宰治『懶惰の歌留多』
●「異様なる日常」の世界 椎名麟三『深夜の酒宴』
●「話し言葉」と、「書き言葉」
書誌情報
紙版
発売日
1983年03月18日
ISBN
9784061456846
判型
新書
価格
定価:726円(本体660円)
通巻番号
684
ページ数
220ページ
シリーズ
講談社現代新書