自閉症

自閉症

ジヘイショウ

講談社現代新書

学校へ行かず、自分の部屋に閉じこもってしまう登校拒否の子、学校へ行っても、おし黙ってしまう緘黙(かんもく)の子……。他人との関係をもつことを避ける彼らは、けっして自閉症ではない。基本的に関係のもてない自閉児の世界ははるかに遠い。どこまでが自分の領域で、どこからが相手の領域か理解できないからこそ、会話は成立しない。と同時に、情の部分が欠如して、論理だけの世界に住む彼らは、何重にも絡み合わされた複雑な人間関係も苦手である。本書は、オウム返しやクレーン現象、パニックや自傷など、自閉児のことばや行動から、彼らの心の中に光をあて、関係をもつための、狭いながら確かな通路を模索する。

自閉の世界に入りこむ試み――ついに10日目になって教師の忍耐もつきた。まさに頭にきたのである。そして、切りきざんだ紙をさらに裁断機で細かくし、部屋の中に放りあげ、まきちらした。半ばやけ気味になって、「雪やこんこ」を歌った。紙片が子どもの頭にふりかかった。子どもはそれを払いのけようとして手を伸ばした。その瞬間、二人の目が本当に合ったという。目が合ったという表現は、それ以外のいいようがない。……そして子どもは声もあげずに教師の背中にまわって、おんぶの姿勢になったのである。――本書より


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目次

●自閉症とは何か
 「自閉」から何を想うか/情緒障害と自閉症
●自閉児のコミュニケーション
 会話ができない/独得の省略
●自閉児の自我の構造
 「わたし」と「あなた」の関係/統合のない論理
●自閉児の行動をどう理解するか
 同一性の保持/パニックと自傷
●自閉からの脱却
 自閉の世界に入りこむ試み/文字の利用

書誌情報

紙版

発売日

1983年07月18日

ISBN

9784061456976

判型

新書

価格

定価:748円(本体680円)

通巻番号

697

ページ数

136ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介