大阪弁おもしろ草子

大阪弁おもしろ草子

オオサカベンオモシロゾウシ

講談社現代新書

〈大阪弁〉には、よういわんわ(私ではなし能わぬことである)、けったくそ悪い(縁起でもない、いまいましい)、ちちくる(男女がしのびあって情を交わす)、タンノする(もう十分、飽きるほど堪能した)、いてこます(やっつける)、あきまへん、おおきに……等々、上方文化の伝統と風土がはぐくんだ独特の表現と言い回しが、いまなお根づよく残っている。庶民の暮らしや風俗へのこまやかな観察をもとに大阪弁のおかしさ、楽しさ、せつなさのあれこれを自在闊達の筆さばきで生き生きと描き出す快著。

「けったくそ悪い」――これは古語の「けたいが悪い」、卦体(けたい)、すなわち気持、気色、などから来ているらしいが、「けったくそ悪い」は縁起でもない、いまいましいという意味になる。ライバルに恋人を奪われ、その結婚式の招待状が来たりすると、「けったくそ悪い」である。ふつうの不愉快ではない。腹が癒(い)えぬ、どうしてくれよう、という意味もこめられ、そのいまいましさを晴らすすべも、さし当って思いつかない、という悶々の状態。ここはやっぱり「クソ」が入ってもよい、いや入らなくてはこの悶々のやるせなさが表現できません。「けったくそ悪い!」とひとりごつと、少しは胸の憂いの雲も晴れようというもの。――本書より


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目次

●よういわんわ 古語について
●ちちくる 上方弁の淫風
●そやないかいな 語尾と助詞
●けったくそ悪い 大阪弁の猥雑
●タンノする 好もしき大阪弁
●明治・大正の大阪弁
●新大阪弁 大阪弁のせつなさ
●いてこます 大阪弁のバリザンボウ
●あたんする 過ぎし世の大阪弁
●せいてせかん 大阪弁の機能

書誌情報

紙版

発売日

1985年09月17日

ISBN

9784061457867

判型

新書

価格

定価:726円(本体660円)

通巻番号

786

ページ数

208ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介