透明人間

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透明人間

トウメイニンゲン

青い鳥文庫

透明になりたい!
透明になっていろいろなことをしたい!人類永遠の願望を実現した科学者の運命は?

その男がおかをこえてやってきたのは、おそろしく寒い日のことだった……。けがでもないのに、ほうたいだらけのその男が人類の永遠の願望をかなえた透明人間だった!おびえる町の人々、しだいに暴力にかたむく透明人間。その運命の行きつく先は?SFの父とよばれるイギリスのH・G・ウェルズの世界的SF古典の名作です。

ホール夫人がふりかえると、客はもとのいすにこしかけていたが、そのあまりの意外なすがたに、彼女はものもいえず、一瞬、客の顔を見つめていた。
客は自分の持ちものの白いナプキンで顔の下半分を、口からあごにかけておおいかくしていた。こもったような声に聞こえたのはそのせいだ。しかし、ホール夫人をおどろかしたのは、そのことではなかった。青いゴーグルの上の顔全体が、すっかりほうたいでまいてある。そして、わずかに鼻だけが、ぐるぐるまきのなかからつきでていたのである。その鼻は、客が旅館についたときとおなじように、ピンク色に光っていた。――(本文より)


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書誌情報

紙版

発売日

1998年06月16日

ISBN

9784061484856

判型

新書

価格

定価:682円(本体620円)

ページ数

250ページ

シリーズ

講談社青い鳥文庫

著者紹介