ユングとオカルト

ユングとオカルト

ユングトオカルト

講談社現代新書

「隠されたる神」の実在がユングを勇気づける。明晰で合理的な意識とふくれあがる無意識の領域。分裂した自我の統合をめざすユングにグノーシスの呼び声がとどく。ヘレニズムの精神的発酵のうちに生まれたこの思想は、ヘルメス学、カバラ、薔薇十字に受け継がれ、集合無意識、星の強制力などの概念をユング心理学に胚胎させる。

“隠されたもの”――彼が好んで占星術に言及したのは、この一連のいわゆるオカルトに対する興味からだけではない。魚座の時代に続く水瓶座の世紀は、この分裂した自我が銃合されるものと彼は考えていた。それは必ずしも宿命的な占星術のお告げを、彼が盲信していたからだけではない。ユングは無意識の中にうごめく力の奇妙な結晶体が、人間の意識を揺り動かすエネルギーを発して、それが人々の運命をリードするという意味で、占星術における運命決定論を許容し認めていたが、新たな水瓶座を示すイメージは、全人格的な原人アントローポスが、壺の水を魚のロに注いでいるもので、この象徴的イメージは、ユングによれば、意識と無意識をつなぎ、内にも外にも開かれた全人が、ようやくこの世にあらわれてくる前兆と考えられた。――本書より


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目次

●自我の統合を求めて
ユングが探す“隠されたもの”
●グノーシス主義とはなにか
グノーシス=隠された知識
●グノーシスの諸派
深遠・沈黙・理性・真理
●ユングの夢分析
●錬金術師とその象徴
ネッテスハイムのアグリッパ
●薔薇十字の秘密
●宗教と科学の接点

書誌情報

紙版

発売日

1987年01月19日

ISBN

9784061488410

判型

新書

価格

定価:726円(本体660円)

通巻番号

841

ページ数

218ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介