
シャ-ロック・ホ-ムズの推理学
シャーロック・ホームズノスイリガク

初対面の相手と握手をした瞬間、どこから来たか、何者かを、ホームズは常に見抜いていた。快刀乱麻の洞察は、想像力を駆使した「成功の確率を高める」方法に支えられる。ホームズのめまぐるしく動く頭脳の内部へ誘い、真実解明への論理過程をあざやかに解きほぐす。
ホームズの推理はどんな推理か――多少とも論理学をかじった人なら、「ホームズの推理は帰納推理なのだ」といって満足してしまうかもしれない。しかし、演繹的推論でない推理をすべて十把ひとからげで「帰納推理」と名付けても、(1)の推理の本性が明らかになったわけではない。確かに、不確実な推理すべてを総称的に「帰納推理」と呼ぶことはあるが、19世紀においてさえ、「帰納」という語にはもっと正確な意味付けがおこなわれていたのである。後に詳しく述べるように、「帰納」という言葉は、実は、19世紀の科学方法論をみるときのひとつのキーワードなのである。それはともかく、ホームズの名人芸は、まさにこのような不確実で例外がありうるはずの推理を使いこなして、正しい結論にたどりつくところにある。――本書より
- 前巻
- 次巻
目次
●ホームズは「論理学者」か
ロンリー警視、ワトスンをこきおろす
●消去による帰納
ホームズの方法は消去による帰納か
●ホーズと確率諭的方法
確からしい知識をめざす
●逆方向の推理
帰納推理とは確率の比較である
●仮説形成
想像力――一目で七つの仮説
●ホームズの復合的推理
書誌情報
紙版
発売日
1988年11月15日
ISBN
9784061489226
判型
新書
価格
定価:704円(本体640円)
通巻番号
922
ページ数
192ページ
シリーズ
講談社現代新書