
時間の本質をさぐる
ジカンノホンシツヲサグルウチュウロンテキテンカイ

時間とは、空気のような存在だ。目には見えず、とらえ所がない。時間が流れるのは、客観的事実なのか、人間の感覚なのか。エントロピー、ブラックホールの探究から〈時〉の神秘に迫る。
意識の時間の矢――人間コンピュータのメモリーの状況を生まれたときから死ぬまでながめて見ると、あきらかに一方方向に記憶量が増加しているであろう。つまり過去と未来の非対称性がある。人間は記憶のない方を過去、ある方を未来というのである。どうして記憶が増加しうるのか。人間もコンピュータも食物とか電力というネゲントロピー資源によって活動を維持して、それで情報をえる活動をして、記憶を増加させているのである。つまりは宇宙全体の歴史的時間の矢の影響をうけているのである。人間もマルクスウェルの魔物のような存在であり、環境にはたらきかけて、町をつくったり工場をつくったりして、エントロピーを減少させている。ただ熱力学第二法則に反するわけにはいかないので、なんの助けもなしにそれができるわけではない。太陽というネゲントロピー資源のおかげ、究極的には宇宙膨張のおかげをこうむって生きているのである。――本書より
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目次
●時間の謎
●古典論における時間と空間
●アインシュタインの相対論における時間と空間
●ブラックホールとはなにか
●ブラックホールのなかの時間と空間
●ワームホールとタイムマシンのつくり方
●時間の流れ――さまざまな時間の矢
●熱力学第二法則とエントロピー
●ブラックホールと熱力学第二法則
●宇宙論的時間の矢
●宇宙膨張とシステムの進化
●マクスウェルの魔物と意識の時間の矢
書誌情報
紙版
発売日
1990年06月12日
ISBN
9784061490055
判型
新書
価格
定価:694円(本体631円)
通巻番号
1005
ページ数
222ページ
シリーズ
講談社現代新書