生き残った帝国ビザンティン

生き残った帝国ビザンティン

イキノコッタテイコクビザンティン

講談社現代新書

偉大なるローマを引き継ぎ、古代から中世を生き抜いた帝国ビザンティン。イコンに彩られた聖ソフィア教会、百万都市コンスタンティノープル……。興亡はげしい文明の十字路に君臨した大交易国家の「奇跡の一千年」を鮮かに描き出す。

「市民」という名の役人――ビザンティン帝国では、都コンスタンティノープルの宮殿において皇帝の即位式が行われる時、「デーモス」と呼ばれる人々が「ローマ人の皇帝万歳」を唱えることになっていた。デーモスとは市民とか民衆という意味のギリシア語である……。これはいうまでもなく、皇帝は市民のなかの第一人者である、というローマ古来の理念を受け継いでいたのである。ローマの伝統を受け継ぐビザンティン帝国ということ、それ自体には取り立てて不思議はない。この国の特異な性格はその先にある。「デーモス長」は皇帝直属の高級官僚であり、「デーモス」もまた国家から給料を得ている下級役人であった……。のちにみるようにビザンティン皇帝は、ローマ皇帝とは異なり絶対的な権力者であった。それにもかかわらず、建前としての「市民の第一人者」を維持するために、わざわざ宮廷に「市民」を雇い、その歓呼によって即位するという形をとったのである。「市民」という名の役人を雇っている国家、ビザンティン帝国とは実に奇妙な国家であったといわねばならない。――本書より


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目次

●投げ捨てられた鷲の紋章
●曲学阿世の徒ビザンティン人
●憧れの都コンスタンティノープル
●踊り子から皇妃へ
●帝衣は最高の死装束である
●「パンとサーカス」の終焉
●「聖像破壊」の神学
●戦略物資、絹織物
●宮廷陰謀は活力の源
●「中世のドル」ノミスマ金貨
●ビザンティン帝国の国家破産
●一晩だけのくじ引き皇帝

書誌情報

紙版

発売日

1990年12月17日

ISBN

9784061490321

判型

新書

価格

定価:748円(本体680円)

通巻番号

1032

ページ数

254ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介