
精神病理からみる現代思想
セイシンビョウリカラミルゲンダイシソウ

離人症における自明性の解体、分裂病が示す自他認識のエポケー、失語症にみられるシニフィアンの交錯など、精神病理を題材に、現象学、フロイトから、ラカン、デリダへと至る、現代哲学にアプローチ。
意味=ロゴスを疑う――フロイトが自我に対して無意識をもち出してきたとき、すでにそれは、「純粋自我」とか「純粋な私」といった近代特有の思想的前提が、いかに疑わしいものであったかを告発しているのだ。同様にわれわれはまた、純粋な「現在」とか純粋な「意味」というものの存在根拠をも、根本から疑ってみる必要があるのではないか。……意味の純化はすでにひとつの暴力にほかならない。それはフーコーが見事にあばいて見せたように、いつか必ず「ヒューマニズム」の名のもとに、そのテリトリーに属さぬものを「病者」として抑圧監禁する、暴力的本性を露わにしてくることだろう。繰り返し言っておこう。われわれはハイデッガーやデリダやラカンのために近代批判や形而上学批判をするのではない。たんにその必要があるからそうするのだ。――本書より
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目次
●意味の彼方へ
●自明性の解体
失われた「あたりまえ」
プレコックス感と相互主観性
●主体の在り処
分裂病の「他者」
●無意識の働き
夢の仕組み
●シニフィアンの戯れ
メタファーとメトニミー
分裂言語と詩の言葉
●差異の形而上学批判
書誌情報
紙版
発売日
1991年11月18日
ISBN
9784061490758
判型
新書
価格
定価:726円(本体660円)
通巻番号
1075
ページ数
212ページ
シリーズ
講談社現代新書