交響曲の名曲・名盤

交響曲の名曲・名盤

コウキョウキョクノメイキョク・メイバン

講談社現代新書

ワルター指揮の「40番」が描くモーツァルトの幻想的な世界。また、クナッパーツブッシュの「第8」にはブルックナーの浄福の境地を聴く――。あまたのCDの中から音の豊穰・交響曲の名盤を選りすぐり、それらが作り出す音楽的感動の深さを語る。

モーツァルト・交響曲第25番ト短調――モーツァルトは短調の交響曲をたった2曲しか書いていない。しかも両方ともト短調である。「第25番」と「第40番」だが、人は前者を〈小ト短調〉と呼ぶ。僕は現在、モーツァルトの数多くの交響曲のなかで、この小ト短調を最も愛する。もちろん大きいほうのト短調も「ジュピター」もすばらしいが、「第25番」はコンサートで演奏される機会が少なく、CDもあまり出ていないので、新鮮味のあるのが大きな理由だ。しかしけっしてそれだけではない。17歳のモーツァルトが音楽に封じこめた青春の嵐は、とてもただごとではなく、その内容の濃さ、その果てしない魅力とともに、われわれの心臓をギュッとつかんでふりまわすようないのちを湛えているからである。それは遠い18世紀のかなたから響いてくる音楽とは思えない。まるでたった今生まれたような、フレッシュなメッセージにあふれているのだ。――本書より


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目次

●ハイドン――交響曲第96番ニ長調「奇蹟」
●モーツァルト――交響曲第35番ニ長調「ハフナー」
●ベートーヴェン――交響曲第7番イ長調
●シューベルト――交響曲第9番ハ長調「ザ・グレイト」
●シューマン――交響曲第3番変ホ長調「ライン」
●フランク――交響曲ニ短調
●ブルックナー――交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
●ブラームス――交響曲第4番ホ短調
●チャイコフスキー――交響曲第6番ロ短調「悲愴」
●マーラー――交響曲第5番嬰ハ短調
●ブリテン――シンプル・シンフォニー
●林光――交響曲ト調

書誌情報

紙版

発売日

1991年12月17日

ISBN

9784061490819

判型

新書

価格

定価:770円(本体700円)

通巻番号

1081

ページ数

278ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介