
信長と天皇 中世的権威に挑む覇王
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天下人信長は、天皇を超えようとしたのか。中世的権威を否定することによって統一事業を成功させた信長の前にある正親町(おおぎまち)天皇という障害。将軍義昭追放の後の政権構想を考察し、天皇制存続の謎と天皇の権威とは何かという問題に迫る。
はじめに――織田信長の最大の敵は、実は正親町天皇であった、というのが、本書でわたくしが最も協調したい点である。天正元年(1573)7月に足利義昭を追放して将軍の座から引きずり降ろし、天正8年(80)には一向一揆を事実上窒息させた信長にとって、目の上のコブは天皇しかなかった。上杉輝虎(謙信)・武田勝頼はすでにこの世の人でなく、関東の北条氏政はすでに信長に款を通じてきていた。(中略)従って、信長が明智光秀に備中攻撃の後詰めを命じたとき、毛利攻めが武田勝頼の討伐ほども手こずるとは考えていなかったに違いない。信長の眼中には、もはや毛利輝元など強敵としては映っていなかったと思われる。彼のこの期に及んでの懸案は、朝廷対策であり、天皇との関係をどうするか――この一事のほかは問題ではなかったのである。――本書より
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目次
●上洛志向
●入京直後の公武関係
信長の禁裏対策
●勅命講和
こん龍の袖にすがる
●天皇の平和
叛逆あいつぐ
三たび勅使を仰ぐ
●神格化の挫折
譲位の強要と拒絶
天皇に翻弄される信長
●本能寺の変なかりせば
書誌情報
紙版
発売日
1992年04月16日
ISBN
9784061490963
判型
新書
価格
定価:694円(本体631円)
通巻番号
1096
ページ数
220ページ
シリーズ
講談社現代新書