
酒池肉林~中国の贅沢三味
シュチニクリンチュウゴクノゼイタクザンマイ

中国の厖大な富が、大奢侈となってふり注ぐ。後宮3000の美女、甍を競う巨大建築から、美食と奇食、大量殺人・麻薬の海、精神の蕩尽まで。3000年を彩る贅沢三昧オンパレードにもう1つの中国史を読む。
人乳で育てたブタがうまいか?――こうした文字通りの消費に血道をあげる傾向は、次の王済のエピソードにも如実にあらわれている。武帝(司馬炎)がある時王済の家に行幸したところ、王済はごちそうを出すのに、すべて瑠璃の器をつかい、100人余りの侍女はみなうす絹のズボンと上着を身につけ、飲食物を手で捧げもった。蒸したブタがこってりとうまく、ふつうの味とちがっていたので、武帝は不思議に思い、わけをたずねた。(王済は)答えていった。「人乳を飲ませております。」武帝ははなはだ穏やかならず、食事がまだ終わらないうちに立ち去った。……乾飯や蝋燭で炊いた飯や人乳を飲ませたブタが美味だとはとうてい考えられないけれども、このように高価な素材や珍奇な材料を、燃料、塗料、飼料などとして、目につかないところで消費することこそ贅沢の神髄だと、西晋貴族は考えたのだった。卑近なたとえをあげれば、本当のお洒落は洋服の裏地に凝る、といったところだろうか。――本書より
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目次
●狂気の不滅願望
●巨大建築マニア
●女たちの幻想空間
●欲望の自己増殖
●文化を「買う」
●贅沢のブラック・ホール
●宦官の呪われた贅沢
●血の快楽
●王朝贅沢史の総決算
●酒浸りか薬漬けか
●流罪も楽し
●漂流する市隠
書誌情報
紙版
発売日
1993年03月17日
ISBN
9784061491397
判型
新書
価格
定価:726円(本体660円)
通巻番号
1139
ページ数
222ページ
シリーズ
講談社現代新書