
ゴリラとヒトの間
ゴリラトヒトノアイダ

「狂暴で残忍な」ゴリラは、穏和な森の住人だった。胸叩き(ドラミング)の見事な様式美。ストイックな視線の会話。多様な行動文法を読み解き、類人猿から人への進化を探る。
平和共存の儀式的行動――相撲と胸叩きが異なるのは、前者が闘いを必然としているのに対し、後者が闘いを避けることが前提であるということだ。そのため、相撲では仕切りは両者がぶつかり合うための前奏として重要である。それぞれの儀式化された美しい動作は、むしろ両者の力を抑え、闘う意思を統制し、一瞬の立ち合いをうまく合わせることへ集中する。一方ゴリラでは、ディスプレイが架空の闘いを演出する。両者は代わる代わる胸を叩いてクライマックスに達し、異なる方向へ突進して闘う意欲を相互に外すことに重点が置かれる。闘いに至れば、ゴリラのオスは死を賭した真剣勝負をしなければならない。相撲のように、体に土がついたり、どちらかが土俵を割った時点で勝負が決まるということはない。ゴリラのシルバーバックたちは、ディスプレイの中で燃え尽き、闘いや攻撃に発展することなく興奮を静める術を進化させたのである。――本書より
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目次
●不思議なトリップ体験
●ゴリラとの出会い
●ドラミングの美学
●ゴリラの付き合い方
●父性行動とは何か
●独特なコミュニケーション
●ハミングの孤独
●ヒトリゴリラの試練
●オス集団の秘密
●メスたちの選択
●子殺しという闇
●類人猿から人類へ
書誌情報
紙版
発売日
1993年07月16日
ISBN
9784061491564
判型
新書
価格
定価:748円(本体680円)
通巻番号
1156
ページ数
240ページ
シリーズ
講談社現代新書