
素顔の医者 曲がり角の医療を考える
スガオノイシャマガリカドノイリョウヲカンガエル

なぜ日本の医者は権威主義的か? 患者数が増え続ける理由は? 日本の医者の源を追いつつ医者養成システムをつぶさに検討し、現代医療の構造的問題に迫る。
人体解剖実習――学生たちは最初、一般的な注意があたえられた後、実習室に入る。防腐剤にまじって異様な臭いが漂っている。ずらりと並んだ解剖台の上に、シーツでおおわれた死体がそれぞれ横たえられている。一台に5人ないし6人の学生が配される。シーツを取ると、固く冷たくなった裸の身体が目にとびこんでくる。おもわず目をそらして、自分が担当させられている、手や足に目を移す。学生はそれぞれ右手、左手、右足、左足というように部分をわりあてられて、そこを解剖するのである。…… 最初の数日は、学生たちはすべてがはじめての体験ばかりで、混乱する。夕食をとるにも、食欲がなくなっている。肉などが視野にはいると、吐き気を覚えるという学生もいる。「なんでこんな実習をしなければならないのですか」と泣きながら先輩に訴える女子学生もいる。――本書より
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目次
●医学は自然科学か
●患者の不満、医者の不満
●「ありがとう」といわない理由
●手本としてのドイツ医学
●人体を解剖する
●医局という組織
●製薬業界との接近
●開業医と病院との競合
●隠されつづける日本の医療
●人間の顔をした医療をめざして
書誌情報
紙版
発売日
1993年12月15日
ISBN
9784061491809
判型
新書
価格
定価:694円(本体631円)
通巻番号
1180
ページ数
216ページ
シリーズ
講談社現代新書