
江戸古川柳の世界―知的詩情を味わう
エドコセンリュウノセカイチテキシジョウヲアジワウ

日常生活の機微を、優しくも鋭いまなざしでとらえ、自由に、おおらかに作られて、江戸庶民の間で大流行した575の世界の機知あふれる詩情を読み、解き、楽しむ。
女房の抵抗――「近所ならこれ着なさいと意地悪さ」亭主が1人でモゾモゾと、良い着物に着替えはじめたので、女房が、「どこへ行くの」と尋ねる。「なに、その、ちょいと近所までだよ」近所までが聞いてあきれるョ。どうせ白粉を塗りたくった女のところへ鼻の下を伸ばしに行くんだろう……。女房の勘は百発百中なのだ。それでツンとして意地悪なアドバイスに及ぶ。「近所へ行くのなら、この普段着でいいでしょ」これが妻としては精一杯の抵抗なのだ。察するところ、夫はふだん家にいるようだし、経済的に家庭を困らせていないようだから、妻としては離婚調停を申し立てるべき段階ではない。この段階では妻ががまんするのが美徳というより当然の心得だった。――本書より
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目次
●知的短詩の隆盛
知的作業から割り出す詩情
●つゝみ社すれ――前句付10句
●流行の仕組み
投稿を集める組織
お客あっての興行
●首尾の能こと――前句付20句
●前句付のたどった道
軽文学の本領
「川柳」の誕生
書誌情報
紙版
発売日
1994年01月17日
ISBN
9784061491854
判型
新書
価格
定価:641円(本体583円)
通巻番号
1185
ページ数
182ページ
シリーズ
講談社現代新書