良寛―魂の美食家

良寛―魂の美食家

リョウカン=タマシイノビショクカ

講談社現代新書

大根に百合根、友と酌む旨酒……。草庵の美味で豊かな生活。晩年に交わされた、深く、真蟄な相聞歌。「道」に生き、恋に生きた、真人の魂の贅沢。

大根鍋のゴージャス――頃はいいだろう。定珍よりプレゼントされた、とっておきの大好物である南蛮粉をふりかけて、ふうふう吹きながら、とろけるように喉元を越してゆく、大根の感触。すえものの酒を酌み交わし、内からは酒と大根、外からは囲炉裡の暖と、友と分かつ一体感。酒もあらかたなくなった。鍋には大根が2、3片残っている。そこへひと握りの托鉢米を入れ、やわらかくなったところで、大根の葉をきざみ、仕上げは雑炊に。…… なにより、良寛さんみずからの手による、季節としてもちょうど食べごろの大根。そして、越後の冷たい海でとれた昆布。あれこれ手を加えず、素材の性質に合った食べ方。日頃は一汁一菜なればこそ、この大根の味がひとしお美味なのである。だからこそ、草庵の囲炉裡に掛かった鉄鍋の大根も、つやつやと輝いて見える。なんともゴージャスな絵柄ではないだろうか。――本書より


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目次

●五合庵への道のり
●山本家の「夜明け前」
●性魯直にして、ただ読書に耽る
●文孝、禅修行を始める
●孤独と気負いと
●虚空遍歴
●越州良寛ここに在り
●草庵の贅沢
●「心のサロン」五合庵
●相聞の甘露

書誌情報

紙版

発売日

1994年11月16日

ISBN

9784061492264

判型

新書

価格

定価:726円(本体660円)

通巻番号

1226

ページ数

236ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介