修羅を生きる

修羅を生きる

シュラヲイキルハンヲノリコエテ

講談社現代新書

話題を呼んだ映画「月はどっちに出ている」の原作者が赤裸々に綴る破天荒の青春譚。骨肉の葛藤、詩への耽溺、無頼と放蕩……鮮烈に生きぬいた在日朝鮮人青年の軌跡。

なぜ、私は書くのか――私は作家にならず生涯をタクシー運転手で過ごしてもよかったのである。実際、私の生き方はそういう生き方だった。私は自分の家族に多くの犠牲を強いてきたが、それは作家になろうとして家族に犠牲を強いてきたのではない。もっとはっきり言えば、私はきわめていい加減な人間だった。私は母に溺愛されたが、家族愛というものを知らなかった。しかも父を反面教師としながら、別な意味で、つまりエゴイストという点で、私は父にそっくりだった。私は自分のことしか考えない人間だったのである。そしてなぜ作家になったのかと言えば、私はついに断念の思いを悟れなかったからだというほかはない。――本書より


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目次

●骨肉の絆のなかで
 闇市の悪餓鬼/相容れない父と子……
●早すぎた詩人の登場
 議論好きの左翼少年/「組織」との葛藤/酒と女と、詩と友と……
●漂流する青春
 「アパッチ族」かく戦えり/綻びていく係累の絆……
●修羅の日々を生きる
 生き残りに賭ける/自失と頽廃の淵で……

書誌情報

紙版

発売日

1995年02月16日

ISBN

9784061492400

判型

新書

価格

定価:726円(本体660円)

通巻番号

1240

ページ数

216ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介