
「気」で読む中国思想
キデヨムチュウゴクシソウ
- 著: 池上 正治

神話の時代から20世紀末の現代に至るまで、中国思想史の流れのなかで「気」はいかに捉えられてきたか。「気」の概念の誕生から、その深化と多彩な展開のプロセスを跡づける。
「気」の今日的意義――その一は、全体性である。20世紀の人類は空前の知識と高度な技術の体系を自分のものとしたが、そこには個別深化という特徴がある。最先端といわれる分野ほどそうである。だが、それは同時に「木をみて森をみず」という欠陥をもつという指摘がある。グローバルな視点が求められている昨今、「気」の概念がもつ全体性、包括性、柔軟性といった特徴は、大きく評価されることになるだろう。
その二は、自然回帰である。人類はすこし工業化を急ぎすぎているようだ。「発展途上国」は「先進工業国」に追いつこうとして懸命である。公害の防止がすでに一種の産業技術となった現在、もっとも公害に悩まされているのは逆説のようだが、発展途上国である。ところが大自然のなかに回帰すると、人々は心からの安らぎをおぼえるのである。それはやはり自然の「気」につつまれるからであろう。――本書より
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目次
●「気」と中国人
●「気」の概念の誕生
●「気」の爆発的な展開
●「気」の深化と仏教の浸透
●「気」をめぐる儒教、道教、仏教
●「気」と理、性、心の関係
●「気」のさらなる多様化
●「気」がむかえた終焉
●「気」の質的な変化
●「気」と現代中国
書誌情報
紙版
発売日
1995年03月16日
ISBN
9784061492448
判型
新書
価格
定価:694円(本体631円)
通巻番号
1244
ページ数
230ページ
シリーズ
講談社現代新書