「死霊」から「キッチン」へ

「死霊」から「キッチン」へ

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講談社現代新書

戦後50年、日本文学は何を表現してきたか。埴谷雄高、武田泰淳、大岡昇平ら戦後の廃墟に登場した文学者の活躍から、大江健三郎を経て、村上春樹、村上龍、吉本ばななの新世代に至るまで、多彩・多様な表現を生みだした作家と作品の世界を眺望する。

一緒に読もう――戦後50年の日本文学は、激動する時代とともに歩みながら、独自な世界のかたちを与えることで、1つの時代が終っても、消滅しない作品を残しつづけてきた。埴谷雄高と安部公房と大江健三郎と村上春樹とは、まったく別な世界の上にいるのではない。同じ世界の上にいるのだが、それぞれの世界へのかたちの与え方が違ってきているのだ。すっきりして、すがすがしく、エロティックな村上春樹に惹かれる読者にとっては、埴谷雄高や安部公房や大江健三郎は、重苦しく難しい文学と感じられるだろう。しかし埴谷雄高、安部公房、大江健三郎が世界へ通じる新しい通路を開いてきたからこそ、現在、村上春樹によって新しい通路が開かれつつあることが認知できるのだ。――本書より


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目次

●全肯定者と全否定者
 存在を革命せよ/三島由紀夫の死……
●新しい土地と苦しむ女達
 崩壊する母/性の凶々(まがまが)しさをきわめる……
●大江健三郎の世界
●世界に向かって撃て
 文学の前衛/破滅の美学/路地から世界を撃つ……
●女流の時代
●春樹、龍、ばななから始まる
 軽やかに、自由に/21世紀に向けて……

書誌情報

紙版

発売日

1995年09月18日

ISBN

9784061492707

判型

新書

価格

定価:694円(本体631円)

通巻番号

1270

ページ数

240ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介