
ジャン・コクト-
ジャン・コクトーゲンシゲイジュツノマジュツシ
- 著: 高橋 洋一

詩・小説・評論・絵画・映画・演劇・バレエ──ジャンルを越え、時代を刺激する表現者ジャン・コクトー。特定の運動に与することなく幻視を追求した芸術家の足跡を辿る。
シネマトグラフ──光というインクで表現すること──コクトーは、自分の映画を呼ぶとき、一貫してシネマという短縮語を峻拒し、シネマトグラフと言う。(中略)ここで気づくのは、コクトーは一般に映画を指す〈シネマ〉を大衆の単なる気晴らし、娯楽ととらえ、思想、芸術の伝達手段としての〈シネマトグラフ〉と明確に峻別していることだ。詩人にとっては、シネマトグラフは、インクと紙によって自らの思想を表現する代わりに、〈映像という目に見える言語〉で自らの思想を伝達するための装置なのである。詩、舞踊、音楽、演劇などの伝統芸術よりはるかに若い芸術ではある(コクトーは、たびたび、映画と自分は同じ年齢だと言っている)が、詩人は、その芸術としての可能性を高く評価し、シネマと比しての血統の良さを示すためにシネマトグラフ呼ぶのである。──本書より
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目次
●ベル・エポックの青年詩人
●ディアギレフ、ストラヴィンスキー、ピカソ
「俺を驚かしてみろ」
●コクトー神話の中の芸術家たち
●ナチス・ドイツ占領下のパリとコクトー
名優ジャン・マレーとの出会い
●パリ解放とコクトー芸術の新たな胎動
テアトル・ド・ラ・モード(モードの劇場)
●内なる知られざる神の探求
アカデミシャンとなった〈芸術界の恐るべき子供〉
書誌情報
紙版
発売日
1995年10月17日
ISBN
9784061492745
判型
新書
価格
定価:694円(本体631円)
通巻番号
1274
ページ数
260ページ
シリーズ
講談社現代新書