エイズの生命科学

エイズの生命科学

エイズノライフサイエンス

講談社現代新書

免疫とはどのようなものか? レイロウイルスとは? HIVによる免疫破壊のメカニズムを平易に説き、感染治療の原理と可能性を探る。また、日本の薬害エイズをも視野に入れ、「エイズ」を通じて知る命のサイエンス。

インターロイキン1と発熱・痛みの関係――生体の持つディフェンス・システムにおいて、発熱の役割とはいったい何であろうか?……マクロファージは外敵が侵入したことを知ると、インターロイキン1を放出して、体温を上昇させ、T細胞とB細胞を速く成長させる。これと同時に、マクロファージ自体も「飲み込む」活動が活発になる。すなわち、体温の上昇が免疫細胞を活性化している。……次に、「痛みと生体防御の関係」について述べてみよう。……インターロイキン1が筋肉組織に放出されると、筋肉のタンパク質に分解が起こることが確認された。筋肉が分解すれば、組織が破壊されるから痛みを感じるのだろう。それと同時に、化学的にはタンパク質の中に蓄えられていたエネルギーが放出される。……病気になった時に感じる不快感は、病気と戦うために必要なエネルギーをタンパク質の分解によって得ていることによる。……この痛みがあるから、私たちは免疫と外敵と戦っていることを実感できるのである。こうしてライフサイエンスが発展することによって、少しずつではあるけれども、私たちの身体に関する素朴な疑問が解けていく。――本書より


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目次

●分子ということばで生命現象を語る
●エイズとは何だろうか?
●希望と挑戦を託した命名
●ヒトの体の三次防衛システム
●主役は白血球
●細胞の強盗殺人者HIV
●逆転写のメカニズム
●HIVと戦う免疫システム
●エイズ治療の現状と可能性
●誰がエイズを広めたのか?

書誌情報

紙版

発売日

1996年02月20日

ISBN

9784061492905

判型

新書

価格

定価:694円(本体631円)

通巻番号

1290

ページ数

242ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介