
新版・クラシックの名曲・名盤
シンパン・クラシックノメイキョク・メイバン
- 著: 宇野 功芳

あまたある名曲・名盤から何をどう聴くか。好評を博した旧版の推薦盤のほか、曲目を大幅に増補、新発売のCDを加えて改訂した決定版。豊穰の音楽世界への新しい道案内。
ベートーヴェン・弦楽四重奏曲第一四嬰ハ短調Op.131――ベートーヴェンの後期の四重奏曲、それは深い思索とファンタジーが曲のすみずみにまで浸透し、融通無碍な形式の自由さを獲得した幽玄ともいえる精神の声である。彼のモットーである〈苦悩を克服して歓喜へ〉への思想はもはや表面に現われず、孤独の影が濃い。ベートーヴェンは静かに自らの人生と心の内面を見つめているのだ。それにしても、これらは本当に淋しい、本当に孤独な人間でなければ書けない音楽ではあるまいか。人に聴かせるというよりは、彼の心の日記のような音楽なので、老ベートーヴェンと一対一で会話をするようなつもりで味わっていただきたい。当時の彼はもはや筆談でしか相手の意志が伝わらなかったのであるが……。ところで「作品131」だが、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の最高傑作は何か、と問われれば、10人中9人までがこの曲を挙げるにちがいない。――本書より
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目次
●モンテヴェルディ―聖母マリアの夕べの祈り
●バッハ―マタイ受難曲BWV.244
●モーツァルト―交響曲第38番二長調K.504 「プラハ」
●ベートーヴェン―弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調Op.131
●シューベルト―歌曲集「冬の旅」Op.89
●ショパン―ピアノ・ソナタ第2番変口短調Op.35 「葬送」
●ブラームス―ドイツ・レクイエムOp.45
●マーラー―歌曲集「さすらう若人の歌」
●ヴォーン・ウィリアムズ―タリスの主題による幻想曲
●グレツキ―交響曲第3番Op.36 「悲歌のシンフォニー」
書誌情報
紙版
発売日
1996年09月20日
ISBN
9784061493209
判型
新書
価格
定価:990円(本体900円)
通巻番号
1320
ページ数
352ページ
シリーズ
講談社現代新書