ベトナムの現在

ベトナムの現在

ベトナムノゲンザイ

講談社現代新書

高度成長を続ける注目国家の実像とは。市場経済化を実現したドイモイ(刷新)の本質を、民族の歴史、共産党体制の変遷から、第1人者が解き明かす。

はじめに――さて、ドイモイとは何か? 私は、ドイモイとは3つの内容を含んだ、ベトナム社会の大きな変革の試みであると考えている。第1は、古い社会主義のモデル、これを私は、社会主義という夢が「明日」にでも実現するのだから、「今日」は皆で貧しさを分かちあって奮闘しようという発想に支えられた「貧しさを分かちあう社会主義」と呼んでいるが、この「貧しさを分かちあう社会主義」からの訣別としてのドイモイである。このような意味のドイモイは、1970年代末から模索がはじまり、86年のベトナム共産党第6回大会で本格的に提起されたといってよいだろう。第2は、ベトナムの個性を探究する試みとしてのドイモイである。私は、ドイモイを論ずることは、ベトナム史全体を論ずることを意味すると考えている。第3は、ドイモイが、人類が21世紀という新しい世紀を目前としている段階で展開されている、すぐれて未来志向の変革の試みであるということである。――本書より


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目次

●高度経済成長の現状
●農民がはじめたドイモイ
●ドイモイ提唱への道
●社会主義の堅持と民主化
●「ホーチミン思想」の登場
●ベトナムのASEAN加盟
●復活するムラ
●成長と社会的公平
●四つの危機
●資本主義と社会主義

書誌情報

紙版

発売日

1996年12月19日

ISBN

9784061493346

判型

新書

価格

定価:705円(本体641円)

通巻番号

1334

ページ数

226ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介