
観音のきた道
カンノンノキタミチ
- 著: 鎌田 茂雄

古来から人々の心のよりどころとして親しまれ、信仰を集めてきた観音菩薩。インドから中国へ、そして日本へ――。その信仰の変容、仏教の展開を通して、民衆の祈りの本質を解き明かす。
観音像の成立――すでに2世紀前後よりあったといわれるインドの観音信仰は、インドや中央アジアから中国へきた訳経僧たちによって観音が説かれた梵本が漢訳されるに伴い、西域から中原の地へと伝えられていった。『法華経』の中の「普門品」で観世音菩薩が現世の苦悩や厄害を救ってくれる霊験が説かれると、観音を信仰すれば病気が治るなどの功徳があることがわかり、しだいに一般の民衆の中にも観音信仰者が現われるようになった。それと同時に信仰者たちの観音に対する祈りや願いの内容は無限に広がっていき、その内容は具体的なものになっていった。ある者は病気を治すことを願い、ある者は金銭や地位を得ること、ある者はよい子どもを授かること、またある者は災厄から免れることを願った。そして、これらのさまざまな願いをかなえてくれる霊験あらたかな観音像を、工人は造るようになった。観音像は民衆のさまざまな願いに応じられる力を持ったいろいろな形で造られるようになっていき、そのバリエーションはしだいに増えていったのである。――本書より
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目次
●観音とは何だろう
●観音の誕生
●「観音経」の教え
●「法華経」と鳩摩羅什
●観音信仰の歩み
●中国僧の観音信仰
●アジア民衆の中に生きる観音
●道教の中の観音
●観音、海へ
●観音と日本人
書誌情報
紙版
発売日
1997年02月20日
ISBN
9784061493414
判型
新書
価格
定価:704円(本体640円)
通巻番号
1341
ページ数
212ページ
シリーズ
講談社現代新書