
新しい福沢諭吉
アタラシイフクザワユキチ
- 著: 坂本 多加雄

近代日本の先覚者とされながら毀誉褒貶半ばする思想家の本質とは。「文明」「独立」等をめぐる言説を読み解き、日本思想史に新たな枠組を提示する。
[思想家福沢]――今日、個人の自由や自発性の尊重との関連で、「自由競争」ということの意味が再認識されていることは周知の通りでしょう。無論、それは、19世紀の考え方のそのままの復活を意味しているわけではありませんが、自由と平等の関係をどのように理解するかは、様々に形を変えながら、今日、なお問題であり続けているということです。とすれば、福沢のような考え方を一時代前のものと決めつけて斥けてしまうことは有意義ではないように思われます。言い換えると、福沢は、今日では、その役割を既に終えてしまった思想家ではないし、同時に、今日から見て「自明の真理」を語っていた「先覚者」でもないのです。すなわち、今日、なお依然として、新しい課題を投げかけてくる問題的な思想家であり、私たちと等しい高さの目線で接しなければならない人物なのです。――本書より
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目次
●「独立」と「情愛」
「世間」と「家族」
●「徳義」と「文明」
福沢は道徳に無関心だったか
●「政治」と「財産」
「講座派」の近代史
●「惑溺」と「自由」
「実験」のすすめ
●「立国」と「偏頗心」
「脱亜論」をどう読むか
書誌情報
紙版
発売日
1997年11月20日
ISBN
9784061493827
判型
新書
価格
定価:748円(本体680円)
通巻番号
1382
ページ数
262ページ
シリーズ
講談社現代新書