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カントの人間学
カントノニンゲンガク
- 著: 中島 義道

エゴイズム、親切、友情、虚栄心……人間の「姿」はいかなるものか。複雑で矛盾に満ちた存在を描き出すカントの眼差しに拠り、人間の有り様の不思議を考える。
無邪気は道徳的ではない――3歳の子供はカントの目からすれば断じて道徳的ではない。それは積極的に悪をなさないが、善をもなさないのである。まったく同じ理由により、性器を切除したために性欲に支配されなくなった男は、性欲を克服したのではない。修道院内に軟禁されている少女たちは、男遊びや飲酒や喫煙に対する欲望を克服したのではない。外形的、物理的にさまざまな欲望を除去あるいは遠ざけあるいは消去することは、いわば幼児の状態を再現することであり、決して真の意味での欲望の克服ではなく、よってこうした状況のもとにおける行為は断じて道徳的ではないのである。道徳的善は、結局自愛に行き着くさまざまな感情の傾きを物理的に抹殺ないし隔離してではなく、こうした多様な感情の傾きを徹底的にくぐり抜けて達成される。――本書より
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目次
●エゴイズムについて
エゴイストと人間嫌い
●親切について
無邪気は道徳的ではない
●友情について
●虚栄心について
なぜ高慢はいつも卑劣か
●生活のスタイルについて
●容貌について
●女性について
書誌情報
紙版
発売日
1997年12月18日
ISBN
9784061493834
判型
新書
価格
定価:990円(本体900円)
通巻番号
1383
ページ数
230ページ
シリーズ
講談社現代新書