
マンガと「戦争」
マンガトセンソウ
- 著: 夏目 房之介

手塚治虫、水木しげるから宮崎駿、エヴァンゲリオンへ――マンガは「戦争」をいかに描いてきたか。日本人の戦争観に迫る画期的マンガ論!
『ゴルゴ13』の「戦争」――ゴルゴの、重く厚い眉に上から抑えられた細い目と、薄く下を開けた三白眼の瞳、また堅く閉じられた口やタフそうな顎は、ほとんど劇的な表情をもたない。おまけに主人公としては異様に寡黙で、吹きだしのなかに「……」しか入っていないことが多い。……これは、手塚マンガが大げさな表情や饒舌さで心理表現をつくりあげたのと、ちょうど逆の打ち消し作用をもたらす。ゴルゴの内面や自意識は意味をなさず、そのぶんだけ悲劇は軽くなる。表立っては表明しにくい脱倫理的な場所からみる相対化された「戦争」。これがゴルゴにとっての戦争であり、同時にいくぶんか読者の欲求を反映していた。全世界を相手にできる有能な個人の場所と、戦争体験に色づけられた重い倫理的戦争観の相対化の欲求である。それは70年以後の青年読者にとって潜在的な欲求だったのではないかと、今になると思う。――本書より
- 前巻
- 次巻
目次
●手塚マンガと戦争
●戦記物ブームと『紫電改のタカ』
●水木しげると戦記マンガ
●戦記物とSF
●ガロとCOMの「戦争」
●戦後世代の「戦争」マンガと『ゴルゴ13』
●終末としての「戦争」
●大友克洋と『AKIRA』
●神話とシミュレーション
●「戦争」と身体
書誌情報
紙版
発売日
1997年12月18日
ISBN
9784061493841
判型
新書
価格
定価:770円(本体700円)
通巻番号
1384
ページ数
180ページ
シリーズ
講談社現代新書