
〈自己責任〉とは何か
ジコセキニントハナニカ
- 著: 桜井 哲夫

国を挙げての無責任システム、横行する自己責任論。日本社会の病根を根源から問い直す。
丸山真男の「無責任の体系」──丸山は、東京裁判の被告たち(戦争犯罪人容疑)の発言を分析するなかで、「既成事実への屈服」と「権限への逃避」という2つの要素を見いだすのです。まず、「既成事実への屈服」です。すでに始まってしまったのだから仕方がない。個人的には反対だったが、なりゆきで始まってしまった以上従うほかない。こうした発言を分析して、丸山は、「現実」が作り出されるものだというより、「作り出されてしまったこと」、あるいは「どこからか起こってきたもの」とみなされていることに注意をうながします。現実的に行動するということは、過去に縛りつけられて行動するということであり、過去から流れてきた盲目的な力によって流されてしまうものとなる。(中略)次に「権限への逃避」です。「法規上の権限はありません」「法規上困難でした」という発言のなかに、職務権限に従って行動する「専門官僚」になりすませる官僚精神の存在が指摘されます。──本書より
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目次
●「恋愛」の自己責任とは?
自分の身体における自己責任
●「責任」とは何だろうか
丸山真男の「無責任の体系」
●「公」と「私」について
●「無責任の体系」は日本的現象なのか
行為全体の責任を負う者がいない状況
●日本は特殊な国なのか
●戦後体制はどのように生まれたのか
●住専問題から日本の明日を考える
書誌情報
紙版
発売日
1998年05月20日
ISBN
9784061494039
判型
新書
価格
定価:770円(本体700円)
通巻番号
1403
ページ数
214ページ
シリーズ
講談社現代新書