
黒い聖母と悪魔の謎
クロイセイボトアクマノナゾキリストキョウイケイノズゾウガク
- 著: 馬杉 宗夫

「光の国」大聖堂のうちに隠された異教・異貌の神々
目隠しされた女性像、黒い聖母、悪魔、葉人間――大聖堂の奇怪な図像はなぜ生まれたのか。もう一つのキリスト教美術を鮮やかに解読する。
ロカマドールの謎の聖母像――聖母マリアには不吉な黒色は似つかわしくない、と思いながらも、その異教的な謎にみちた姿は、われわれをとらえてはなさない。逆に黒色だからこそ神秘的な力を持って迫ってくるのかもしれない。遠くからしか見えない意外に小さな聖母像(0.76メートル)に迫力を与えているのは、確かに全身を被う黒色である。黒は不思議な力を持っているのである。(中略)ロカマドールの《黒い聖母像》については、かつて銀箔で被われていたためにその酸化作用によって黒くなったのだ、と言う人もいる。しかし、実際は、それは黒く塗られたロマネスク時代の代表的木造彫刻の1つであり、黒い聖母として崇拝されてきたことを忘れてはならない。では、なぜ黒く塗られたのであろうか。この《黒い聖母》の謎を解くためには、それが崇拝された場所について調べる必要を感じるのである。なぜなら、それらの地はケルトの伝統を残す選ばれた地だったからである。――本文より
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目次
●悪魔の出現とその形態
●ロマネスク美術と「黙示録」
●右と左の序列――左は悪い方向
神の視点の存在
●謎の黒い聖母像
●「旧約聖書」伝壁画のなかの横顔像
●目隠しされた女性像シナゴーガ表現
●「葉人間」の正体
●怪物ガルグイユの象徴的意味
●一角獣のタピスリーの意味
書誌情報
紙版
発売日
1998年07月17日
ISBN
9784061494114
判型
新書
価格
定価:726円(本体660円)
通巻番号
1411
ページ数
216ページ
シリーズ
講談社現代新書