平家物語の女たち

平家物語の女たち

ヘイケモノガタリノオンナタチダイリキ・アマ・シラビョウシ

講談社現代新書

巴・祗王・祗女、建礼門院、小督……中世女人伝説をいきいきと読み解く!

巴――大力の女性の伝説――義仲軍の一方の大将として活躍してきた巴は、打出浜における東国勢との戦闘の結果、主従5騎になるまで討たれなかった。5騎の中に残った巴に、討死を決意した義仲は、おまえは女だから、戦場を離脱してどこへでも行け、と勧めたのである。しかし、巴はなおも落ちて行かなかった。そこへ、武蔵国大里郡の恩田八郎師重(もろしげ)という大力で聞こえた武者が30騎ほどで現れた。巴はその中に駆け入り、恩田師重に馬を押し並べると、むずと組んで師重を馬から引き落とし、自分の乗っている鞍の前輪に押しつけて身動きさせず、その頸をねじ切って捨ててしまった。その後、巴は物具(もののぐ)(鎧・兜)を脱ぎ捨て、東国の方へと落ちていった。以後、巴は『平家物語』に現れず、杳としてその行方を断った。『平家物語』に登場する、後世の伝説を削ぎ落とした巴の原型ともいうべき姿は、あくまでも義仲軍の一方の大将である大力の女武者としての巴である。ここでは、このような大力の女武者としての巴の像が造形化されたのはなぜか、巴の大力伝承の背景について考えてみたい。――本書より


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目次

●巴――大力の女性の伝説
 女冠者と女騎
●祗王・仏・静――白拍子の廻国
 近江野洲の祗王伝説
●小督――王権と音楽
 小督の琴と源仲国の笛
●建礼門院――尼の行方
 髑髏の尼
●平経正――僧侶と児男色
 元服と出家

書誌情報

紙版

発売日

1998年10月20日

ISBN

9784061494244

判型

新書

価格

定価:704円(本体640円)

通巻番号

1424

ページ数

208ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介