
はじめてのギリシア悲劇
ハジメテノギリシアヒゲキ
- 著: 丹羽 隆子

人間の深層心理を切り取った最古のドラマが放つカタルシス。西洋的教養の源泉をいきいきと読み解く。
[「供養する女たち」(「オレステイア」第2部)]――アポロンから父の仇討を命じられたオレステス。母を殺し、復讐の正義を成就しなければ、狂気、追放の憂い目にあうと脅されて、ついに母殺害をなし遂げたオレステス。だが、そのオレステスは復讐を遂げたあと、みずから穢れた者として国を去り、さらに罪の意識にさいなまれて復讐女神(エリニユエス)の幻覚を見て狂気に陥るのです。アポロンが教えた仇討の正義(ドラサンティ・パテイン)とは何か。復讐の連鎖はどこまでつづくのか。神はなぜ直接罪人を罰しないのか。なぜ苦悶する人間をとおして復讐の正義を成就させようとするのか。神罰とは何か。正義とは何か。オレステスはこうした難問を私たちに突きつけます。苦難により学ぶ(パティ・マトス)ことこそ、この世の掟、ゼウスの恵み。詩人はその解決を、第3部で神々にゆだねます。――本書より
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目次
●「アガメムノン」男の正義、女の正義――血に呪われたアトレウス王家の連鎖する復讐劇
●「エレクトラ」絶望から歓喜へ――父への愛、母への憎悪、弟への想いに憑かれた娘の孤独と忍耐
●「オイディプス」目を突いたのは、この私だ――知らずして父を殺し、母と結ばれる運命を生きる悲劇の王
●「メディア」わが子は、母親のわたしが殺そう――男の裏切りによる女の狂乱とその恐るべき復讐
●「ヒッポリュトス」ご機嫌よう、お別れです――愛の女神に謀られた禁忌の三角関係の哀しい行方
書誌情報
紙版
発売日
1998年12月18日
ISBN
9784061494336
判型
新書
価格
定価:726円(本体660円)
通巻番号
1433
ページ数
238ページ
シリーズ
講談社現代新書