アメリカ文学史のキーワード

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講談社現代新書

ヴァイキングの航海から1千年の時空を織り成す古今の“名作”の思想を大胆に読み直す!

蝶々夫人症候群――いちばん顕著なジャポニズムの実例は、『蝶々夫人』だろう。明治期の長崎を舞台にした同名の日本人芸者が米軍海軍士官ピンカートンと恋に落ち子どもをもうけるも裏切られるというこのあまりにも著名な悲恋物語が、……アメリカ文学史上の果実であることを知る者は案外少ない。1897年12月、アメリカはペンシルヴァニア州に住む当時37歳の法律家ジョン・ルーサー・ロングが『蝶々夫人』という小説を発表したのが、真の起源であった。……この世紀転換期、日清・日露戦争の勃発は明らかにアジアを差別する黄禍論を勃興させたものの、それはまったく同時に、アジアへの魅惑をも覚えるエキゾティシズムの広まるきっかけとなった。……進化論的発想が人種差別的意識の内部へ融合しながらも、まったく同時に他者の蠱惑をもかきたててやまないエキゾティシズム勃興の時代と見るのは、ひとつのパースペクティブかもしれない。しかし、これはとりもなおさず、アメリカがまさにその内部において、多様なる移民を受け入れつつ織りなす多元文化主義の実現への第一歩を踏み出す瞬間だった。――本書より


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目次

第1章 コロニアリズム
第2章 ピューリタニズム
第3章 リパブリカニズム
第4章 ロマンティシズム
第5章 ダーウィニズム
第6章 コスモポリタニズム
第7章 ポスト・アメリカニズム
おわりに
参考文献
アメリカ文学年表

書誌情報

紙版

発売日

2000年09月20日

ISBN

9784061495210

判型

新書

価格

定価:748円(本体680円)

通巻番号

1521

ページ数

256ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介