道徳を基礎づける―孟子vs.カント,ルソー,ニーチェ

道徳を基礎づける―孟子vs.カント,ルソー,ニーチェ

ドウトクヲキソヅケルモウシウブイエスカントルソーニーチェ

講談社現代新書

現代フランス思想のトップランナーが仕かける孟子と啓蒙哲学者の対話

井戸に落ちそうになった子供を助けようとするのはなぜか――。
誰にでもある経験を起点に、カント、ルソーや孟子を比較検証。洋の東西を軽々と超える、現在フランス哲学の俊秀の快著。

ある王の逸話――謁見の儀の折、1頭の牛が供犠のために引き連れられて横切ってゆくのを、王が目にしたときのことである。処刑場に引き立てられる無辜の民にも似た、この動物の怯えた様子に忍びず、王は牛を放すように命じた。
その時、家臣たちが尋ねた。「犠牲をやめるべきでしょうか」。王は答えた。「それはできない。この牛に代えて羊を用いよ」。……
王は、怖じけづいた1頭を自分の目で見てしまった。その怯えは彼の目の前に不意に出現したので、心の準備をしておくこともできなかったのだ。ところが、もう一方の動物の運命は、彼にとっては観念にすぎなかった。……
王は苦しんでいるものを「目のあたりにすること」に「忍び」なかった。彼は他者――それが動物でさえも――の運命に無関心ではいられなかったのである。――(本書より)


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目次

〈1〉憐れみをめぐる問題
第1章 忍びざるものを前にして
第2章 基礎づけか比較か――あるいは基礎づけのための比較
第3章 憐れみの「神秘」
第4章 道徳心の徴候
〈2〉性と生について
第5章 人性論
第6章 善か悪か
第7章 失われた性を求めて
〈3〉他者への責任
第8章 人間性、連帯
第9章 天下を憂う
〈4〉意志と自由
第10章 妄想的な意志?
第11章 自由の観念無しに
〈5〉幸福と道徳の関係
第12章 正義は地上に存す
第13章 地は天に肩を並べる
第14章 これは中国的教理(カテキスム)ではない
第15章 道徳心は無制約者(天)に通じる

書誌情報

紙版

発売日

2002年06月20日

ISBN

9784061496149

判型

新書

価格

定価:814円(本体740円)

通巻番号

1614

ページ数

312ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介