表現の現場

表現の現場

ヒョウゲンノゲンバ

講談社現代新書

「林檎の礼拝堂」から新しい現場へ
北斎、マチス、ピカソ、ル・コルビュジェ、絵巻物、洞窟画……そしてタクボ!!

作家がいなくなった未来においても生き続ける表現の現場こそ、私がめざす「風景芸術」なのだ。

若冲の部屋――私が画家になったのは、少年の頃の不思議な体験がきっかけだった。……白日夢のような、その時の感覚が忘れられなくて、いまだに私は、あっち側(闇)とこっち側(光)の境界をさまよっているような気がする。その不思議な空間は、四国こんぴらさんの奥書院にある『百花の間』である。秋の日の午後、ひんやりとした空気のなかで、薄暗い部屋の壁に、じっと目を凝らすと、金砂子の背景から、紅い椿や白い菊、梅や山百合、朝顔や鉄線、紫陽花や向日葵などなど、色鮮やかな自然の花が、暗い闇のなかから湧き出して、私の目の前に、次々とその姿を現す。私は座っていた6畳の畳の床からふわふわと浮きあがり、沢山の折花とともに、重力を失ったまま宇宙をさまよっているような錯覚をおぼえた。……この部屋に花の絵を描いた画家は、京都、高倉錦小路の青物問屋、桝屋の長男として1716年に生まれた伊藤若冲(じゃくちゅう)である。――(本書より)


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目次

第1章 プロローグ――あるいは田窪恭治の軌跡
第2章 線と眼差
1―アンリ・マチス
2―線について
3―葛飾北斎
4―浮世絵から印象派へ、そしてピカソ
5―カスパール・ダヴィット・フリードリッヒ
第3章 未完成
1―ル・コルビュジェ
2―ジョット・ディ・ボンドーネ
3―アントニオ・ガウディ
第4章 封印された時
1―ラスコーの洞窟画
2―ローマングラス
3―ポンペイ
第5章 東西絵巻
1―バイユーのタピストリーと日本の絵巻物
2―縦・横・斜め
第6章 風景芸術
1―エジプト
2―オランダの不思議
3―琴平再生計画

書誌情報

紙版

発売日

2003年04月20日

ISBN

9784061496613

判型

新書

価格

定価:924円(本体840円)

通巻番号

1661

ページ数

224ページ

シリーズ

講談社現代新書

著者紹介