
神・人間・動物
カミ・ニンゲン・ドウブツデンショウヲイキルセカイ

古代人は狐や鳥の鳴き声に予兆を探り、それはまた、天上界の神が動物となって人間に幸福をもたらすという考え方とも通じた。本書は、白鳥、蛇、鹿、鵜、狐、鮭、熊などの野生動物の生態を通して、神と人間と動物の三者が織りなす親和力の世界を克明に描き出したものである。山林の伐採などにより、山野に住む生き物たちとの共存の場を失ってしまった神を畏れぬ現代人への鋭い警鐘をともなう、谷川民俗学の新しい境地を拓いた意欲作。
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目次
●遠野から──プロローグ
・「自然の摂理」とは?
・追われる野獣
・神にまつられた孤狼 ほか
●霊界をはばたく使者──白鳥(はくちょう)
・伝承の中の白鳥
・「産土(おぼすな)さま」になった白鳥
・「白鳥(しらとり)事件」といわれる争い ほか
●海を照らす神(あや)しき光──海蛇
・「神光照海」の扁額
・竜蛇神をめぐる神事
・セグロウミヘビの威厳 ほか
●海神(わたつみ)の娘──鮫
・竜宮の姫はだれか?
・鮫と寄り添うイルカ
・人を食った鮫 ほか
●もの言う南海の人魚──儒艮(ジュゴン)
・津波を起こす魚=ザン
・ジュゴン(ザン)の正体
・新城島のザン漁と巻踊り ほか
●狩りに騒ぐ太古の血──鹿
・狩りの主賓だった鹿
・「殉教者」としての鹿
・志賀島と鹿卜(ろくぼく)の記憶 ほか
●黄泉(よみ)への誘い鳥──鵜
・能登の海鵜
・「鵜取部」と鵜の役割
・「生と死」と鵜の関係 ほか
●不死と再生の象徴──蛇
・土器と土偶に残された蛇
・さまざまな蛇伝説
・神と蛇の生殖 ほか
●狩言葉に満ちた世界──猪
・「後狩詞記(のちのかりことばのき)」の村へ
・椎葉村の猪狩り
・猪と神々の間柄 ほか
●葛葉の神秘と幻想──狐
・予兆力を期待された獣
・狐と狼との関係
・葛葉神社と葛葉伝説 ほか
●北の異族の匂い──鮭
・川をのぼる鮭の感動
・アイヌの宝=鮭
・利権と保護の争い ほか
●荒ぶる山の神──熊
・熊狩りと禁忌
・狩りの方法と熊の商品価値
・アイヌと熊の関係 ほか
●エピローグ
書誌情報
紙版
発売日
1986年06月05日
ISBN
9784061587380
判型
A6
価格
定価:855円(本体777円)
通巻番号
738
ページ数
276ページ
シリーズ
講談社学術文庫