
短歌一生
タンカイッショウ
- 著: 上田 三四二

ここに心があり、そこに物があるのではない。物が心であり、心が物である。現実のあらわれかたとしては、物は物であり心は心であるが、二つを結ぶのが詩歌の言葉で、結ぶというのはそれらが本来一であることを証(あか)すのである。詩歌の言葉は、かぎりなく身にちかい。心の声だからである。その心の声が意味を帯びるのは、声が身をはなれて物にとどくからだ。むしろ、物における意味が身において声となるのである。(著書「あとがき」より)
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目次
1 作歌の指標
1.底荷
2.歌の道三題
3.作歌の指標1
4.出来、不出来
5.即詠作法
6.作歌の指標2
7.老いと円熟
2 物に到るこころ
1.物に到るこころ
2.俳句に学ぶ
3.序詞と枕詞のこと――物と心と言葉・素稿
4.子規の尖端
5.対蹠(たいせき)的なものの行方
6.「写生」の虚実
7.いのちの歌
3 実作と鑑賞
1.作歌の現場
2.春泥――わが歌の秘密
3.ある年の春に
4.詩歌12カ月
5.花橘(はなたちばな)の一首
6.「ただよふ」につき
7.「東海の小島」のこと
8.寂寥と憧憬
4 わが来し方
1.私の処女作
2.療養所にて
3.歌人・人間・世間――あるいは隠遁について
4.たまものとしての四十代
5.供物の餅
6.季節はわれを
7.立秋のころ
8.還暦
9.余命
10.病後元旦
11.没(い)り日と月の出
12.道の上
5 源流と本質
1.定型意識の問題
2.相聞歌序説
3.物と心と言葉
書誌情報
紙版
発売日
1987年01月06日
ISBN
9784061587717
判型
A6
価格
定価:1,100円(本体1,000円)
通巻番号
771
ページ数
314ページ
シリーズ
講談社学術文庫