
甘えと反抗の心理
アマエトハンコウノシンリ

人間の体は時がたてば自然に成長するが、心はひとりでに成熟するわけではない。おとなしいよい子が、ある日突然家庭内暴力少年に変身することもあれば、社会を不安に陥れる凶行の陰に意外な甘え欲求が隠れていることもある。青年が成熟し自立することはいつの時代でも難しい。まして、引延ばされた青春期を送る現代日本の若者には、特に。〈甘え〉と〈反抗〉という相反する心の力学に注目し、人間の健康な自立への方途を探る有用の書。
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目次
●1 甘えと反抗
甘えと反抗の意味/プレイ・セラピーの一例/攻撃的な人びとの甘え ほか
●2 思春期の攻撃性
攻撃性の起源/思春期の攻撃性/父親反抗 ほか
●3 現代青年の精神状況
異邦人/エリクソンの理論/自我同一性の危機 ほか
●4 思春期の逸脱集団
思春期の本能変遷――ウチからソトへ/反抗と逸脱/衝動の発動と満足 ほか
●5 校内暴力を考える
甘え型暴力/タテマエの世界/学校という場のちがい
●6 反抗の病理
前エディプス的反抗期/ことばのない反抗/反抗への対応
●7 自我同一性の病理
エリクソンの否定的同一性/愛されなかった子どもの運命/男性であることの不安
●8 攻撃性と依存性
爆発性から依存性へ/未熟な依存性と攻撃/依存性と攻撃性の対決
●9 日本的と現代的と
甘えと攻撃/攻撃犯罪の比較文化/甘えの拡散
●10 総括の理論――連合赤軍リーダーの残したもの――
「自己批判書」のなりたち/なぜ「総括」か/「心理家」と「革命家」 ほか
●11 青年の過渡的同一性――大江文学の心的構造――
想像力/エンパシー/被害者との同一化 ほか
書誌情報
紙版
発売日
1988年08月04日
ISBN
9784061588394
判型
A6
価格
定価:902円(本体820円)
通巻番号
839
ページ数
258ページ
シリーズ
講談社学術文庫
著者紹介
装丁: 蟹江 征治(カニエ セイジ)