
霊魂観の系譜
レイコンカンノケイフ

日本ではタマシイのことを玉(たま)ともいう。人が死ぬと人玉は体外へ脱出し、時には暴れ回って人に憑(つ)いたり祟(たた)ったりする。こうして畏怖される人玉は、やがてシャーマンの呪術によって鎮(しず)められる。日本人のこのような霊魂観を、本書は、古代シャーマニズムと民間信仰および中世の死霊観にみられる怨霊(おんりょう)思想などに探り、更に折口信夫の巫女(ふじょ)観や柳田國男の祖霊観の見直しの必要性を説く。歴史民俗学の視点から日本人の霊魂観を考察した労作。
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目次
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●1 古代郷土生活の民俗学――シャーマニズムより追究
1 民俗学による古代研究
2 古代シャーマニズムと民間信仰
3 民間巫俗(ふぞく)の諸類型――憑霊(ひょうれい)伝承を中心として
4 民間巫俗による古代宗教生活の復原
まとめ
●2 のろいの人形――古代人の霊魂信仰
1 木簡の活用度
2 のろい人形――古代人の霊魂信仰
3 古代の呪詛(じゅそ)
4 ヒトガタからノロイへ
●3 怨霊から御霊(ごりょう)へ――中世的死霊観の展開
●4 怨霊観と2つの型
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●1 折口信夫と巫女(ふじょ)観
はじめに――日本民俗学と巫女研究
1 折口の古代研究
2 古代研究と巫女観
3 巫女即処女観
4 沖縄巫女の研究
まとめ――巫女研究の展望
●2 柳田国男の祖霊観
1 先祖に対する関心
2 柳田の民族的祖先観
3 柳田の霊魂観――祖先観の背景
4 柳田と家族国家観
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●1 民俗学と歴史研究――日本民俗学の限界について
1 日本民俗学の宿命
2 日本民俗学の対象
3 日本民俗学の方法
4 日本民俗学と歴史研究
●2 歴史民俗学の構想――郷土における民族像の史的復元
序 問題の提起
1 重出立証法(じゅうしゅつりっしょうほう)の批判――伝承母体の確定
2 重出立証法の克服――歴史民俗学の前提条件
3 民俗資料による郷土研究――1つの作業例(1)
4 民俗の類型と変遷――1つの作業例(2)
むすび
書誌情報
紙版
発売日
1989年03月07日
ISBN
9784061588677
判型
A6
価格
定価:1,056円(本体960円)
通巻番号
867
ページ数
334ページ
シリーズ
講談社学術文庫