
茂吉秀歌『赤光』百首
モキチシュウカシャッコウヒャクシュ

──従来の茂吉自身の「写生」の説に随順し、ひいては弟子、一門の徒としてひたすら鑽仰する「解説」も1つのタイプではあるが、これは一応さておき、私は別の角度から茂吉の歌を照射し、その秘密に肉薄したかつた。それはそのまま短歌を含めた日本の詩歌のあるべき姿を求め探ることであり、滅びてはならぬ美の典型を記念する道にも繋がらう。『赤光』鑑賞はその試みの第一歩である。(著者・跋より)
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目次
・ひた走るわが道暗ししんしんと堪(こら)へかねたるわが道くらし(悲報來)
・ほのぼのとおのれ光りてながたれる螢を殺すわが道くらし(同前)
・氷きるをとこの口のたばこの火赤かりければ見て走りたり(同前)
・赤彦と赤彦が妻吾(あ)に寢よと蚤とり粉を呉れにけらずや(同前)
・罌粟(けし)はたの向うに湖(うみ)の光りたる信濃のくにに目ざめけるかも(同前)
・鳳仙花城(しろ)あとに散り散りたまる夕かたまけて忍び逢ひたれ(屋上の右)
・天そそる山のまほらに夕よどむ光りのなかに抱きけるかも(同前)
・屋根にゐて微(かそ)けき憂(うれい)湧きにけり目(ま)したの街のなりはひの見ゆ(同前)
・めん鶏(どり)ら砂あび居たれひつそりと剃刀研人(かみそりとぎ)は過ぎ行きにけり(七月二十三日)
・たたかひは上海に起り居たりけり鳳仙花紅く散りゐたりけり(同前) ほか
書誌情報
紙版
発売日
1993年06月04日
ISBN
9784061590779
判型
A6
価格
定価:1,046円(本体951円)
通巻番号
1077
ページ数
358ページ
シリーズ
講談社学術文庫
初出
備考参照
著者紹介
装丁: 蟹江 征治(カニエ セイジ)