
幻想の未来 唯幻論序説
ゲンソウノミライユイゲンロンジョセツ
- 著: 岸田 秀

自我も世界も幻想である
欧米人を支える「近代的自我」――それは日本人が夢見つづけた幻影だった。著者は、人間が本能の壊れた動物であり、「自我」とはその代用品として造られた幻想だと喝破する。それゆえに自我は、常に何物かに支えられずには存立できない不安定な存在である。そのラディカリズムにより、20世紀後半の日本の知に深刻な衝撃を与えた「唯幻論」の代表作。
わたしは、人間の問題は自我の問題であると思った。それでは、自我とは何か、見たところ、人間以外の動物は自我のようなものは持っていないようで、それで別に困っているわけではなく、うまく世界のなかで生きている。人間だけがなぜ、こんな面倒な煩わしいものを持っているのか。……しかし、どうも人間にとって、自我は必要不可欠らしい。なぜか。どうにかならないか。――(本書より)
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目次
対人恐怖と対神恐怖
引き裂かれた人間
「甘え」の弁明
「卑屈さ」の研究
ふたたび自我の問題
「真の自己」
自我と欲望
自我の支えの否認
書誌情報
紙版
発売日
2002年10月10日
ISBN
9784061595668
判型
A6
価格
定価:1,056円(本体960円)
通巻番号
1566
ページ数
296ページ
シリーズ
講談社学術文庫
初出
底本:本書は、’94年7月刊行の河出文庫『幻想の未来』を底本とした。