太閤の手紙

太閤の手紙

タイコウノテガミ

講談社学術文庫

道義を好み不義を憎み、仲間と敵を愛し、
親孝行で子煩悩、女好きな恐妻家――
日本人に最も愛された英雄の素顔

数多の「太閤記」が振りまいた誇大と虚妄に満ちた英雄伝説の数々。しかるに、本当の秀吉はいかなる男だったのか? 喜・怒・哀・楽が発露する手紙。読めば読むほど面白い信書を、丹念に読み味わおう。「つゆとおちつゆときえにしわがみかな難波の事もゆめの又ゆめ」と辞世を詠んだ英雄の生きざまと本心が、まざまざとよみがえる。

秀頼事、成りたち候やうに、此の書付の衆として、たのみ申し候。なに事も、此のほかには、おもひのこす事なく候。
ここに掲げた末期の文は(中略)、「秀頼事、たのみ申し候。」の連発で、「なごりおしく候。」と結んでいるところなど、(中略)英雄の最期の言葉とは、どうしても思えない。忍び泣く女性の繰りごとにも似ている。鳥のまさに死なんとするや、その声よし…という古語があるが、これが人間太閤の本音であったと、私は思うのである。――<本書「19 末期の文」より>


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書誌情報

紙版

発売日

2006年08月10日

ISBN

9784061597754

判型

A6

価格

定価:1,100円(本体1,000円)

通巻番号

1775

ページ数

304ページ

シリーズ

講談社学術文庫

初出

底本:1959年、文藝春秋より刊行された『太閤の手紙』を底本とし、著作権者の了承を得、現代仮名表記に改めた。

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