
中世民衆の生活文化(下)
チュウセイミンシュウノセイカツブンカ
- 著: 横井 清

身分の固定しない中世民衆内部の差別意識はいかに形作られたのか
中世封建社会が確立するにつれ、乞食(こつじき)非人・河原者などと呼ばれる人々が卑賤視の対象となってゆく歴史的条件とは何か。農耕を中心的生業とする共同体は外来者への警戒、内部規律の徹底によって結束を強めてゆく。また穢れの観念、物忌み意識の深化が生み出す同一階層内での排除。やがて近世的身分制度に組み込まれてゆく賤視された人々の実相を読む。
1962年12月の「中世における卑賤観の展開とその条件」(第7)は、中世史研究者・部落問題研究者いずれの間でも、論議の俎上には上りにくかった。(略)民衆内部の「差別意識」の問題を扱うのは時期尚早と見なされやすく、中世身分制研究に一時期を画したと評される黒田俊雄氏の「中世の身分制と卑賤観念」が最新の論としてこの仕事に言及したのは、10年近くも後の1972年5月のことであり、その間は殆ど学界の陰にあった。――<「学術文庫版『中世民衆の生活文化(下)』に寄せて」より>
※本書は1975年に東京大学出版会から刊行された同名の書の第14刷(1999年刊)を底本とした。文庫化にあたり3分冊にした。
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目次
第7 中世における卑賤感とその条件
第8 中世の触穢思想――民衆史からみた
第9 中世民衆史における「癩者」と「不具」の問題――下克上の文化・再考
付論6 「河原者」の定義と「散所」研究の動向
付論7 鈴木良一著『応仁の乱』にみる「人民」「よけいもの」観についての感想
付論8 河原者又四郎と赤――民衆史のなかの賤民
書誌情報
紙版
発売日
2008年01月12日
ISBN
9784061598508
判型
A6
価格
定価:990円(本体900円)
通巻番号
1850
ページ数
264ページ
シリーズ
講談社学術文庫
初出
底本:1975年に東京大学出版会から刊行された同名の書の第14刷(1999年刊)を底本とし、文庫化にあたり3分冊した。